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2012年7月 1日 (日)

国王陛下の記念列車 タイ  服部一人

 タイ国鉄がプミポン国王の誕生日である12月5日など、特別な日にバンコク〜アユタヤ間に祝賀列車を走らせる。この日だけはピカピカに磨き上げられた2両の蒸気機関車が先頭を走るのだ。

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タイ国旗とタイ王室の旗を掲げて走る。

 

 タイ国民が敬愛するプミポン国王は、かつて全国各地を精力的に行幸され,その際にはしばしば鉄道を利用された。また離宮のあるホアヒンやバンパインの駅には王室専用の瀟酒な駅舎があり、やはり鉄道を利用されることもあったようだ。
今でいうライブスチームのような汽車にまたがって遊ぶ、ご幼少の頃の写真を見たこともある。若い時から交通機関に非常に関心が高かったと伝えられる国王は、実は鉄道がたいへんお気に入りなのではと、ひそかに推察する次第である。

 この祝賀列車は観光用のイベント列車として定着しており、朝バンコクのファランポン駅を出発し、通常の列車よりゆっくりと2時間ほどで約70キロ離れたアユタヤ駅に到着する。バンコク市街を出たあとは,のどかな田んぼの中をひたすらまっすぐ走るだけなので,車窓風景はいささか単調で盛り上がりに欠けるが、車内は家族連れやグループ旅行で出発前からにぎやかなことである。汽車の前で子供の写真を撮ったり、お菓子を食べながらおしゃべりをしたりと、いずこも同じ微笑ましい風景である。到着後は有名な古都アユタヤの寺院巡りを半日ほど楽しんで、夕刻またバンコクに向けて戻ってくる。

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きれいなグリーンに塗られたカマ。

 ところでこの2両の汽車、日本製である。戦争中、有名な泰緬鉄道向けに約90両の汽車が軍需物資として送られているが、それではない。この2両は戦勝国となったタイに、日本から戦時賠償という形で昭和20年代に輸出された汽車の生き残りである。

 実は、アユタヤに2年ほど住んでいた。タイ生活最後の年、下見に行っておいた田んぼの中の見晴らしのよいポイントに車で出かけた。カメラをセットし入念に構図を決める。何度も来ているので迷いはない。望遠レンズのファインダーをのぞくと、遠くの線路脇に人影が見えた。日本ならこんな日に線路際にいるやつは鉄道ファンに決まっているが、ここはタイである。まだ鉄道趣味は一般的ではない。

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 タイの「乗り鉄」グループ

 近づいて話しかけてみると、中年のタイ人の鉄道ファンだった。それもかなり本格的な。機材もさることながら、マニア同士ならわかるオタク特有の雰囲気を発散している。日本の鉄道雑誌も見ているという。タイに鉄道ファンはいるのか聞いてみると、彼は「多くはないけど仲間はいるよ。ロットファイで、時々集まっているよ!」と言った。「ロットファイ(鉄道)」とはバンコクにある、客車のような内装が売りのカフェレストランである。

 名刺を交換して「今度集まる時にはおいでよ」。と言われて別れた。その少しあとに僕は帰国してしまい、約束を果たしていないが、今度タイに行く時には、日本の鉄道雑誌をお土産に、会ってみたいと思っている。

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