香港のトラム 2階席から眺める景色 服部一人
トラム好きの私はあちこち出かけては、電車に乗るのを楽しんでいるのだが、とりわけ香港はお気に入りの場所です。1980年代後半から90年代初頭にかけては、たびたび訪れて集中的に撮影している。
我々レイル・オンが1991年5月に第2回のグループ展を、今はなき渋谷のドイフォトギャラリーで開催したときには、4×5で撮ったカラー写真を大きくプリントして展示したこともある。昔の写真はまた後日として、今回は2000年代になってからの最近の写真です。
香港は変化の激しい街だ。埋め立てや再開発などで街の外観もどんどん変わる。この20年ほど車両には大きな変化はないが、むかし撮った写真を見ると、背景が大きく変わってしまった所もある。香港のトラムといえば車体全面を覆う広告も名物だが、当時は日系企業の広告も多かったものが、近頃は韓国や中国の広告も目立つ。
初めて香港のトラムに乗ったときには運賃はちょうど1香港ドル。今では2.3香港ドルになったが、物価を考えれば今でも非常に安い乗り物である。全長16キロ程度の路線だが停留所は120くらいもあるらしい。ちょっと走ってはすぐ停まるといった感じである。よくダンゴになって電車が来るが、フリークエントサービスでたいして待たなくても次の電車がやってくる。値段の安さといい、気軽にすぐ乗れる庶民の足だ。
このトラムの特等席はなんといっても2階の最前列だろう。窓を開けてここから顔を出して、過ぎゆく両側の街並みを眺めているのは実に楽しい。香港人もやはりこの場所が好きなようで、なかなか特等席は空いていない。よく始発駅まで行って、席を確保して乗ったりしたものだ。1階と2階の高さの違いは、せいぜい2、3メートル程度であろうか。わずかの差のようだが景色の見え方はまるで違う。見晴らしが良く、街が立体的に見える。
この電車に乗るために、香港に行ったときにはいつも香港島のホテルに泊まっていた。朝ホテルを出て近所のマクドナルドで朝ご飯を食べると、すぐ目の前の電停から乗車して1日が始まる。午前中はだいたい「乗り鉄」を楽しむ。冷房がないので暑い時間帯は手近なショッピングセンターやカフェなどに入って小休止。日が傾き始める夕方になると、再び乗車してお目当ての場所まで行って「撮り鉄」をする。そんな1日を何度も過ごしたものだ。
ぼつぼつラッシュが始まる夕方のハッピーバレー。
有名な北角の市場の中を行く電車。香港のトラムに夢中になるきっかけは、夕方の雑踏の中、人をかき分けながらゆっくりと進む、ここのトラムの姿を見てからだ。
日本のトラムと違い、終点はループ線になっている。そのためポール集電の付け替えも行わないし、両運転台だが通常は片側しか使わない。
終点 筲箕湾
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