ドイツのナローSL(下) ツィッタウ狭軌鉄道 チェコ国境に近い里山を行く 服部一人
ドイツのナローSL、前回はこちら→http://blog.rail-on.com/2012/08/sl-2e0d.html 前々回はこちら→http://blog.rail-on.com/2012/08/post-7992.html
ツィッタウは、ドレスデンの東およそ100キロにある田舎町だ。ドレスデン中央駅から乗ったディーゼルの快速列車は、軽快に飛ばして2時間弱で到着した。このまま乗っていれば列車はチェコに向かう。国境はすぐそこだ。降り立ったDBのツィッタウ駅はホームは長いが、列車は3両編成だ。ガランとして人気が少ない。
このあたりは旧東ドイツ領だ。ドイツも東西が統一してから、はや長い年月がたつが、この町は、まだ何となく東側の匂いが残っているようにも感じる。スーパーに並ぶ品数は、ドレスデンなどの都会に比べると当然少ない。そしてチェコ製やポーランド製の商品もいくつかある。泊まったホテルも、簡素で無機的な部屋の造りと調度品などが、なんとなく昔の東側のホテルのようである。30年ほど前に、まだ社会主義をやっていた頃のソビエトや東側諸国を旅行したことがあるが、そんな昔のことを思い起こさせる雰囲気がある。
ツィッタウ狭軌鉄道は、このDBのツィッタウ駅前から出ている。途中の分岐駅ベルツドルフで二股に分かれて、一方はオイビンへ。もうひとつの終点はヨンスドルフ。全部合わせても16キロ程度のローカル線だ。ここのゲージは750ミリ。ハルツの1000ミリ、モリー鉄道の900ミリに比べても、ひときわナローゲージである。汽車を正面から見ると、車体に対して狭いレールの幅が何ともナローゲージらしさを演出している。
駅で列車を待っていると、DBの駅前広場を横切って汽車が入線してきた。機関区が駅と離れた反対側にあるようだ。駅のホームは石畳が敷き詰められ、屋根を支える柱や梁はきれいな木造の木組みだ。小さいながらも落ち着いた静かな駅である。停まっている客車のダークグリーンの渋い塗装もいい感じ。このへんの細かいディティールはナローの雰囲気を醸し出すためにけっこう重要で、例によって私の琴線に触れる。
まず列車に乗って分岐駅のベルツドルフヘ。ツィッタウの町を過ぎたあとはのどかな田園地帯を通り、森の中の小駅といったたたずまいのベルツドルフに到着。
ここに来たのには訳がある。この駅で路線は二手に分岐するのだが、双方向に行く列車は同時発車するようにダイヤが組まれている。なんとSLの同時発車が日に何度も見られるのだ。まことにファンならたまらない。ここの名物である。
私もさっそく構内はずれに陣取って、このお目当ての同時発車を見送ったのだが、すいません、写真がありません。実はこの時は本格的にビデオの撮影をしていて、スチル写真を撮っていませんでした。同時と言っても微妙にタイミングをずらしての出発。この時はヨンスドルフ往きが先に発車、こちらは駅を出るとすぐに上り勾配なので、勢いを付けてダッシュ。その数秒遅れでオイビン往きも出発。2列車が出発したあとには、駅構内には煙の残り香がゆるやかに空に立ち上っていくという、余韻あるいいシーンでした。
ドイツには、他にもナローSLが運転されている鉄道が多数ありますが、この時の訪問はこれだけ。また近いうちに是非とも続きをやりたいものです。
ツィッタウ狭軌鉄道 路線概念図
機関区からDBツィッタウ駅前を横切り、狭軌鉄道の駅に向かう汽車。ドイツでよく見かけるE型タンクだが、ここは750ミリゲージなので、とりわけナロー感がある。
ツィッタウ駅に入線する汽車。汽車の高さに合わせてかさ上げされた屋根の造形が美しい。
ツィッタウ駅に停車中の列車。一番手前は自転車などを積み込む荷物車。
天気のいい日は最高のオープントップの客車。
ベルツドルフを出発してオイビン方面に往く列車。
標準ゲージのDBの貨車をこの路線に入線させるために、貨車ごと乗せてしまうナローの貨車。もうじっさいに使われている気配はなかったが、走っているところを見たい。
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