スイスの小さな鉄道 1 ベルナーオーバーランド鉄道(BOB) 服部一人
12両の長大編成が高速で駆け抜けていく。ヴィルダースヴィル付近
昨年秋から冬にかけて季節が移りかわる頃、スイスの鉄道を旅してきた。
短い滞在での駆け足旅行だったが、スイス国鉄などの本線クラスは素通りして、いつものように私の琴線に触れるローカル線や登山鉄道、トラムなど小さな鉄道ばかり訪ねてきた。ため息が出るほど美しいスイスの自然と共に、訪れたどの鉄道も深く印象に残る旅だった。
飛行機がチューリッヒ空港に到着したのは朝7時を少しまわった頃だった。窓の外を見るとまだ夜が明けきらず薄暗い。冬のヨーロッパに来たと実感する瞬間だ。
チューリッヒ空港はアクセスが良い。今回はスイス全土で使えるスイスレイルパスを持参しているので、すぐに空港に乗り入れている鉄道駅から特急に乗りこんだ。座席が空いている限り予約の必要はない。来た列車に荷物を持って飛び乗るだけだ。実に気軽で快適。空港に降り立ってからさほどの時間がたっていないのにもう列車の中だ。
2階席のゆったりとしたシートに腰を下ろし、だんだんと明るくなってきた車窓を眺める。目指すはスイス中部のリゾートタウン、インターラーケンだ。
インターラーケンは「湖の間」という意味だそうだが、まさにそのとおり。ブリエンツ湖とトゥーン湖にはさまれた小さな街だが、アイガー、メンヒ、ユングフラウといったヨーロッパアルプスの名峰を背後にいただくベルナーオーバーランド地方の観光の拠点。この街の周囲にはいくつかの魅力的な登山鉄道がある。今日から数日間、ここに滞在し順番に訪問していこうという算段だ。
ここからでている登山鉄道を乗り継いでいくとユングフラウヨッホという、ヨーロッパ最高地点にある駅まで鉄道が通じている。そこまでの道のりは地図を見ると一つの鉄道のようだが、実際はいくつかの私鉄によって運営されており途中駅で乗り換えながらトップを目指すことになる。まずは一番ふもとを走るベルナーオーバーランド鉄道に乗車した。
ベルナーオーバーランド鉄道はインターラーケンを起点とした23キロほどの鉄道。途中駅で分岐して一方の終点はグリンデルワルド。もう一方はラウターブルンネン。両駅共に別の私鉄に接続している。軌間はメーターゲージ、ほとんどの区間が粘着運転だが、一部急勾配区間にラック式を採用している。
始発駅インターラーケンで出発を待つ列車は、メーターゲージにしては車体も大きく堂々の12両編成。これがほぼ30分に1本走っているのだから、この鉄道の需要の高さがわかる。分岐駅で6両ずつ分かれて、それぞれの終点を目指す。一部にラック区間があるとはいえ、いわゆる登山鉄道とは趣がことなりスピードも速い。列車は里山のような景観の中を走り次第に山深く分け入っていくが、まだそれほどの山岳地帯というほどではない。目指すトップのユングフラウヨッホ駅に向かう、ここはまだ序の口のアプローチなのだ。
街はずれにあるインターラーケンオスト(東)駅で出発を待つ列車。青と黄色の車体が目に鮮やかだ。
ヴィルダースヴィル付近
一部にラック区間がある。注意深く乗っているとギアのかみ合う音と若干の振動で、それとわかるが、ほとんど気がつかないレベルだ。グリンデルワルド付近
終着駅のグリンデルワルド。
もう一方の終着駅ラウターブルンネン。深い峡谷の谷底にひらけた街だ。
スイスの自然はまことに美しく、どこにカメラを向けても絵になるといった気持ちさえする。それゆえ絵はがき的な写真に終始してしまい、あとから見ると美しくはあるが、いささか単調で少しオーソドックスに過ぎる気もするが、これから何回かの連載をどうぞおつきあいください。
CanonEOS 5DMk2, 60D, EF17-40/4, EF100Macro/2.8, Distagon35/2, Makro Planar50/2
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