スイスの小さな鉄道 4 ユングフラウ鉄道(JB) 服部一人
開業100周年の記念列車。1912年開業当時の電気機関車がしずしずと山を下ってきた。
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ユングフラウ鉄道は、第3回で紹介したウェンゲンアルプ鉄道のクライネシャイデッケ駅を始点として、ユングフラウヨッホ駅までひたすら登る登山鉄道である。全線9.3キロ。メーターゲージでラック式を採用して最急勾配は250パーミルに達する。終着のユングフラウヨッホ駅はヨーロッパ最高地点にある駅として名高い。その標高は3454m。富士山の8合目くらいに匹敵する。そんなところにまで鉄道を建設したスイス人の情熱に深く感心するが、それが何と100年も前に開通したということにまた驚かざるを得ない。
この鉄道の特徴は、実はその
ほとんどの区間が「地下鉄」だということだ。全線9.3キロのあいだに5つの駅があるが、地上を走るのは始発のクライネシャイデッケの次のアイガーグレッ
チャーまでの約2キロだけである。あとは固い岩盤の中をくりぬいて作ったトンネルの中を行く。したがって登山鉄道でありながら、すばらしい車窓風景が広が
るというわけにはいかないが、途中の地下駅には岩盤をくりぬいた展望用の窓があり、それぞれ数分間ずつ停車して夏でも見事な氷河を眺めることができる。
クライネシャイデッケ駅を出発して、いざ山に登る列車。多客時には続行運転もある。中央にある駅舎の裏側に第3回で紹介したウェンゲンアルプ鉄道のホームがあり、乗客はここで乗り換える。
この先わずかな区間だけが地上を走り、あとは「地下鉄」。
天空に向かって登るがごとく急勾配が続く。
今回のスイス旅行の中で、この鉄道はぜひとも訪れたい筆頭であった。ヨーロッパ最高地点というのも魅力的で、その場に立ってみたいという気持ちも強かったが、訪問時(2012年)はちょうど開業100周年で記念の古典列車が走るというのが目当てであった。この列車は開業当時(ということは100年前の!)木造電気機関車が古典客車を牽引するという趣向で、古いもの好きの私としては見逃せないものである。
撮影はクライネシャイデッケ駅から10分ほど歩いた線路際。背後にアイガーの山容が迫る。ここで山から降りてくる列車をとらえようというわけだ。予定より約15分ほど遅れて遠くに小さな列車の影が認められた。下りは転がってくるだけだから静かなものだが、次第に近づくにつれてモーター音が聞こえるようになった。板張りの車体にニスの色が光に反射して実にクラシック。各車両には花束を飾ってあるのも可愛らしい。ゆっくりと目の前を通り過ぎて行く姿に見とれてしまった。100年前と変わらぬアルプスの山々をバックに、これまた100年前の古典列車が走る。開業当時の雰囲気を想像するにたる印象的な光景である。はるばるスイスまで見に来た甲斐があったものだと、いたく満足であった。
クライネシャイデッケ駅に到着した古典電機。花飾りがチャーミング。
こちらは通常の運用で使用される近代的な電車。
多客時には少し古いタイプの電車も出てくる。こちらの方がお好み。
こちらは一転雪景色となったユングフラウ鉄道。赤い電車がよく映える。
外から見た終点ユングフラウヨッホ駅。よくもまあ、こんな所まで鉄道をひいたものだと感嘆するような自然の中にある。突き出た建物が駅と直結する展望台で、地下のホームからつながっている。さらに氷河をくりぬいた遊歩道を上っていくと、左上にある高い展望台まで行ける。そこからの眺めはまさに絶景。
Canon EOS5DMk2, 60D, EF100Macro/2.8L, 17-40/4L, Makro Planar50/2, Distagon35/2
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