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終点シーニゲプラッテから山を降りる列車。
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シーニゲプラッテ鉄道は、インターラーケンからひと駅行ったヴィルダースヴィルから出発する小さな登山鉄道である。
この鉄道の大きな魅力は、開業当時の雰囲気を伝えるレトロで可愛らしい列車である。車齢100年にもなろうとするビンテージ電気機関車が、小さな客車2両をゆっくりと押し上げて登っていく姿は実にチャーミング。雄大なアルプスの前でかわいい列車はなおさら小さく見える。 この鉄道の開業は1893年だが電化されたのは1914年。その時に導入された機関車が現在も美しいコンディションで運行
している。始発駅ヴィルダースヴィルからアルプスの展望台として名高い、終点シーニゲプラッテまで全長約7.3キロ。800ミリのナローゲージで、全線
ラック式で最大250パーミルの急勾配を登る。高低差は1420メートル、終着のシーニゲプラッテは標高1987メートルの絶景の見晴台だ。
ヴィルダースヴィル駅でベルナーオーバーランド鉄道から降りると、向かいのホームにはひとまわり小さな、まさにナローゲージといった感じの列車が待っていた。客車は比較的近代のものだが、各シートごとに開き戸のドアがあるクラシックなスタイルだ。クリームと赤のツートンがよく似合う。
約7.3キロに所
要時間はおよそ50分。ということは列車の速度は.... まあ歩くよりは速いが、自転車程度といったところか。出発した列車は、はじめ平坦な区間が
続くが、その気になれば飛び乗り、飛び降りできるのではないかというくらいの速度。ゆったりと動いていく車窓の美しい緑を見ていると、何だか浮き世離れし
た気分にもなってくる。
やがて列車は森の中に入り、いきなり急勾配になる。後ろから押し上げる小型の古典機関車のモーター音が一段と大きくなり、スピードもさらに少しゆっくりになる。
右に左にと、いくつものカーブをまわった後は尾根筋に出て視界が大きく広がる。はるか下界にインターラーケンの町とブリエンツ湖が見えてきた。時に歩くようなスピードで登りきった先がシーニゲプラッテ駅。気持ちのいい山並みが広がるすばらしい展望台だった。
始発駅ヴィルダースヴィルで出発を待つ列車。機関車が後ろ側に付き客車を押し上げる形で登る。
発車してしばらくはベルナーオーバーランド鉄道と平行して走る。スローモーションを見ているような速度。
やがて急カーブをきり、森の中の急勾配へと入っていく。
尾根筋に出るとすばらしい車窓風景が続く。背景はブリエンツ湖。
終点シーニゲプラッテ。客車は最大でも2両なので、多客時は続行運転になる。この時は団体が入って3列車が相次いで到着した。
山から下りてきた列車はすべてパンタグラフを降ろして惰性で降りてくる。運転手の話では、下りはモーターの抵抗をブレーキ代わりに、ゆっくりと下ってくるが、その際にパンタグラフが架線と接触していると電力回生ブレーキとなって架線に高電圧が流れ、同時に走っている上り電車が意図せぬスピードになる事を防ぐということだ。ほんとかなぁ という気もするが、何しろ100年も前の機械の事だから、そういう事もあるのかもしれない。小さな機関車の車内には大きなモーターが鎮座していて、これがけっこうな発熱をするらしい。したがって晩秋の少し寒いような日でも常にキャブのドアは開けっ放し。
機関車はすべて同形だが、いずれも100年前後の車齢を持つオールドタイマーばかり。しかもコンディションも上々だ。
いろんな塗装があって、どれもとても可愛らしい。持って帰って1台、庭先に置いておきたい気分。
動力の伝達はラック式の歯車のみで、車輪には動力は伝わらず、ただガイドの役目をするだけ。
こういう脇役たちもナローらしい可愛らしさにあふれている。ほとんど原寸大の模型といった感じ
CanonEOS5DMk2, 60D, EF100Macro/2.8L, 17-40/4L, Makro Planar50/2, Distagon35/2
開業100周年の記念列車。1912年開業当時の電気機関車がしずしずと山を下ってきた。
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ユングフラウ鉄道は、第3回で紹介したウェンゲンアルプ鉄道のクライネシャイデッケ駅を始点として、ユングフラウヨッホ駅までひたすら登る登山鉄道である。全線9.3キロ。メーターゲージでラック式を採用して最急勾配は250パーミルに達する。終着のユングフラウヨッホ駅はヨーロッパ最高地点にある駅として名高い。その標高は3454m。富士山の8合目くらいに匹敵する。そんなところにまで鉄道を建設したスイス人の情熱に深く感心するが、それが何と100年も前に開通したということにまた驚かざるを得ない。
この鉄道の特徴は、実はその
ほとんどの区間が「地下鉄」だということだ。全線9.3キロのあいだに5つの駅があるが、地上を走るのは始発のクライネシャイデッケの次のアイガーグレッ
チャーまでの約2キロだけである。あとは固い岩盤の中をくりぬいて作ったトンネルの中を行く。したがって登山鉄道でありながら、すばらしい車窓風景が広が
るというわけにはいかないが、途中の地下駅には岩盤をくりぬいた展望用の窓があり、それぞれ数分間ずつ停車して夏でも見事な氷河を眺めることができる。
クライネシャイデッケ駅を出発して、いざ山に登る列車。多客時には続行運転もある。中央にある駅舎の裏側に第3回で紹介したウェンゲンアルプ鉄道のホームがあり、乗客はここで乗り換える。
この先わずかな区間だけが地上を走り、あとは「地下鉄」。
天空に向かって登るがごとく急勾配が続く。
今回のスイス旅行の中で、この鉄道はぜひとも訪れたい筆頭であった。ヨーロッパ最高地点というのも魅力的で、その場に立ってみたいという気持ちも強かったが、訪問時(2012年)はちょうど開業100周年で記念の古典列車が走るというのが目当てであった。この列車は開業当時(ということは100年前の!)木造電気機関車が古典客車を牽引するという趣向で、古いもの好きの私としては見逃せないものである。
撮影はクライネシャイデッケ駅から10分ほど歩いた線路際。背後にアイガーの山容が迫る。ここで山から降りてくる列車をとらえようというわけだ。予定より約15分ほど遅れて遠くに小さな列車の影が認められた。下りは転がってくるだけだから静かなものだが、次第に近づくにつれてモーター音が聞こえるようになった。板張りの車体にニスの色が光に反射して実にクラシック。各車両には花束を飾ってあるのも可愛らしい。ゆっくりと目の前を通り過ぎて行く姿に見とれてしまった。100年前と変わらぬアルプスの山々をバックに、これまた100年前の古典列車が走る。開業当時の雰囲気を想像するにたる印象的な光景である。はるばるスイスまで見に来た甲斐があったものだと、いたく満足であった。
クライネシャイデッケ駅に到着した古典電機。花飾りがチャーミング。
こちらは通常の運用で使用される近代的な電車。
多客時には少し古いタイプの電車も出てくる。こちらの方がお好み。
こちらは一転雪景色となったユングフラウ鉄道。赤い電車がよく映える。
外から見た終点ユングフラウヨッホ駅。よくもまあ、こんな所まで鉄道をひいたものだと感嘆するような自然の中にある。突き出た建物が駅と直結する展望台で、地下のホームからつながっている。さらに氷河をくりぬいた遊歩道を上っていくと、左上にある高い展望台まで行ける。そこからの眺めはまさに絶景。
Canon EOS5DMk2, 60D, EF100Macro/2.8L, 17-40/4L, Makro Planar50/2, Distagon35/2
寒い日が続きますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
すでにお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、前回までの3回の
記事は、1970、80年代の音楽から着想を受けて作成しています。
ということもあり、閉じこもり気味のこの季節に、まったりとカメラや音楽の
話を書いてみたいと思います。過去3回の記事にちなんだ内容にして
いきますのでよろしくお願いいたします。(いきなりの展開にお許しを)
1回目は1月23日の記事についてですが、大貫妙子さんの1stアルバム
「GreySkies」(1976年)をモチーフに3枚の写真と曲中ワードを活かした
キャプションで構成しています。
タイトルは少しだけ変えて「Grey Sky」としていますが、このタイトルは
学生時代からコトあるごとに使わせてもらっていて、たしか1992年の
レイル・オンの写真展でもこのタイトルで使わせてもらいました。
この頃使っていたカメラで印象深く今でも好きなカメラが「キヤノンEF」。
学生時代に友人が所有していたものを、こちらのカメラと交換してもらった
もので、その後の活躍はもちろんのこと、いまでも大事にしています。
EFは、1973年(昭和48年)に登場したちょっと悲運なカメラなんです。
当時、ライバルが相次いでAE一眼レフを発表してブームを起こしている中、
キヤノンもAE機の開発を行なっていましたが、マイクロコンピュータ制御の
先進装備を計画していたため、開発に時間がかかっていました。
そこで開発期間を短縮するため、自前主義を一旦おき、外製(コパル社)の
シャッターユニットを使って新機種を投入することになりました。
それがEFで、ハイブリッドシャッター(高速側機械制御、スロー側電子制御)
と速写性を高めるべく設計(シャッターボタンと巻上げレバー、シャッター
ダイヤルが同軸になっている)が与えられ、F-1の弟分として期待されました
が、オイルショックでの値上げや3年後の76年に世界的ヒットとなるAE-1が
発売されたこともあり、地味な存在となってしまいました。
しかし、私にとってはこうした背景も含めて、F-1級の堅牢な金属ボディと
シンプルないでたちに、たいへん魅力的に感じてしまうのです。
さて、話しは大貫妙子さんに戻りますが、「Grey Skies」を最初聞いたとき、
あれっと思いました。微妙に声が揺れたりかすんだりで、一聴しただけで
は、その良さが理解できなかったのは事実です。
しかし、聴き込むにつれて、独特な空気感といいますか、世界感にハマって
いったのを今でも鮮明に覚えています。
この中から2曲ほど「Wander Lust」と「When I Met The Grey Sky」をおススメ
したいと思います。前者はちょっとJazzyで疾走感のある気持ち良い楽曲。
後者は、冬空を感じさせる空気感のあるサウンドで不思議な世界感に浸る
ことができ、この2曲を含め本盤全てが大いに感性を刺激してくれます。
普通、アルバムには2、3良い曲が入っていればアタリだと感じるのですが、
本盤は全編通して聴ける数少ない名盤だと思います。
2nd「SunShower」以降も、数々の名盤・名曲を残し、いまも大御所として
活躍中の大貫妙子さんには本当に敬服いたします。
振り返ってみますと、1970年代は音楽もカメラも大きく進化した時代だったと
思います。音楽は洋楽に負けないクオリティや感性を表現して関心を集め、
一方、カメラはそれまで難しかった露出決定などの操作系を自動化して
機能面を充実。そして価格面でも一般化していった時代だったと思います。
長くなりましたので、今回はこの辺りで終わりにしたいと思います。
お付き合いいただきありがとうございました。
皆様、体調には気をつけてお過ごしくださいませ。
Omake:
昔どこかの中古SHOPで見つけた巨大なファインダー。
モータードライブと組合わせると、なんだかF-1がスゴイことになります。
列車が去った後には・・・長くゆったりとした時間と空間が流れてゆきます。
そこにはいつも、いずれまたやって来る次の列車の予感があるのです。
線路から付かず離れず、そこにある名もない小さな一瞬を見つけては、ささやかなアルバムの1ページを重ねてゆきます。
地吹雪
降雪は止みましたが、風はますます強く横殴りで、線路がうっすらと消えてゆきます。
予想通り、今日は運休になりました。
大糸線 頸城大野-姫川 HASSELBLAD 500CM Distagon CF 50mmF4 T*
閉ざされた駅
列車の来ない駅は、急にひと気がなくなりました。
ホームの向こうには白い海原が荒れ狂っています。
大糸線 頸城大野 HASSELBLAD 500CM Distagon CF 50mmF4 T*
暴風雪
夕暮れ迫る頃、一息ついていた吹雪がまた暴れだしました。
夕闇までもが吸い込まれてゆきそうです。
大糸線 小滝-根知 HASSELBLAD 500CM Distagon CF 50mmF4 T*
ウェンゲンアルプ鉄道は1回目で紹介したベルナーオーバーランド鉄道のそれぞれの終点である、ラウターブルンネン〜グリンデルワルドを結ぶ登山鉄道だ。路線は約19キロ、軌間800ミリのナローゲージで全線ラック式を採用した急勾配の鉄道だ。
両端の駅からそれぞれ列車は出発し、中間のクライネシャイデッケ駅をめざす。ここがサミットで標高2000mを超える。登山鉄道の常で列車は動力車を勾配の下側に連結して客車を押し上げる形で推進運転する。最大でも4両までしか連結できないため、お客が多い時には続行運転になる。3本続けてきたこともあり、これはなかなか楽しい。
先に紹介したベルナーオーバーランド鉄道と、この先トップまで登るユングフラウ鉄道にはさまれて、中間を結ぶだけのいささか地味な鉄道に見えるが、この鉄道は急勾配で標高をどんどん稼ぐので、始発から終点までの環境の変化が大きく、乗車には一番楽しめる鉄道だ。始発駅では秋の気配がただよう里山の風情の中を出発するが、標高が上がるにつれて次第に高い木が少なくなり、クライネシャイデッケ駅についた時にはあたりは雪景色ということもあった。
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始発駅ラウターブルンネン。ガラス張りの屋根で明るい日差しがさしこむ。右のベルナーオーバーランド鉄道から左のウェンゲンアルプ鉄道に乗り換える。
ラウターブルンネンで停泊する車両。背後の山の中腹にあるクライネシャイデッケ駅をめざし、ここから登っていく。
ラウターブルンネンを出発した列車は大きくカーブを切り、ラック式でぐいぐいと勾配を登っていく。
途中駅のウェンゲンに到着した列車。このあたりまでは秋の風情だった。
もう一方の始発駅、グリンデルワルド駅で出発を待つクライネシャイデッケ行き。左のベルナーオーバーランド鉄道から乗り換える。
グリンデルワルド駅を出てしばらくは美しい里山を行く。
次第に標高が上がるとあたりは雪景色となる。
勾配を上りつめ終着クライネシャイデッケ駅に進入する列車。
終点クライネシャイデッケ駅で顔を合わせた2本の列車。ラウターブルンネンから来た列車と、もうひとつはグリンデルワルドから来た列車。
Canon EOS5DMk2, 60D, EF100Macro/2.8, 17-40/4, Makro Planar50/2, Distagon35/2
二十四節気では春とつきますが、寒さはこれからが本番といえなくありません。
それでも季節は正直なもので、日の長さは確実に延びてきました。
背丈ほどもある深い雪の中で、奥会津の冬はまだまだ続きます。
厳冬-水の郷
豊潤な水を湛える只見川では、季節を問わず朝霧が立ち込めます。
天気予報では分からない、低い雲の動きの中で、その下に繰り広げられる凍てつく水辺は、凛として目覚めてゆくのです。
只見線 会津塩沢-会津蒲生 HASSELBLAD 500CM Sonnar C 150mmF4 T*
深雪の駅
除雪した雪が次第に背丈を越し、2月に入ると見事な雪の回廊ができあがります。
雪壁は全ての音を吸収し、列車はかすかな余韻を残して去ってゆきました。
只見線 会津桧原 HASSELBLAD 500CM Distagon CF 50mmF4 T*
白い隧道
白の世界にくっきりと輪郭を描く隧道は、音のない世界からさらに何かを吸い込んでゆきそうです。
気がつくと粉雪が優しく舞っていました。
只見線 会津桧原-会津西方 HASSELBLAD 500CM Sonnar C 250mmF5.6 T*
***** ある日 稚内駅 *****
というタイトルではありますが、前回の記事で状況は説明済み・・・ですね、あしからず。先月26日の暴風雪により、稚内に閉じ込められましたが、「転んでもただでは起きぬ!」と、駅で撮影していました。
「ホームに出られますか?」と駅員さんにお訪ねしたら、さすがに今日は立ち入り禁止、とのことでしたが、ホームに通じる自動ドア手前まで行かせて下さいました。ドアにも雪粒がびっしり・・・。
嵐が少し落ち着いた頃、近くの踏切からのホーム。
線路は跡形もなく、もちろんユキノシタです。
2013.1.26 稚内 Canon 5DMarkll EF24-105mm F4 EF70-200mm F4
ラウターブルンネン・ミューレン山岳鉄道は高い崖の上を走る。ほかの鉄道の駅とも接続していない単独の路線を単行の電車が往復している静かな鉄道だ。グルシャルプ〜ミューレン間、わずかに4.2キロ。全線粘着運転でメーターゲージの単線だ。
茶色とベージュのレトロなツートンがいい雰囲気。ミューレン付近
始発のグルシャルプ駅は、ベルナーオーバーランド鉄道の終点ラウターブルンネン駅から大型のロープウェイが通じている。実は鉄道の名前にもあるとおり、このロープウェイと鉄道を含めてラウターブルンネン・ミューレン山岳鉄道と呼んでいる。
ラウターブルンネン駅。左側の駅舎のすぐ裏から、左後方の山の山頂までロープウェイがあり、そこがグルシャルプ駅。
下がラウターブルンネンの街並み。
ラウターブルンネン・ミューレン山岳鉄道は、
この高い崖の上にある。
谷底のラウターブルンネンからロープウェイで一気に登った山上のグルシャルプ駅には小さな1両の電車が待っていた。ここから尾根沿いに左手にアルプスの山々を眺めながら走る。単行電車の座席に身をゆだね、ガタゴトと揺られる気分はローカル線そのものだ。下界の街には雪はなかったが、ここまで登ってくるとすでにあたりは白く、遠くに見える山もすっかり雪をかぶっている。
ほかの鉄道と接しているわけではなく、路線もたった4キロほどで、単行の電車が行ったり来たりするくらいでまかなえるほどの鉄道需要しかない。ほかの交通機関でもよさそうな、こういうところにも鉄道を敷き現在まできちんと運行しているのは、鉄道好きなスイス人らしいことだと思うが、この鉄道には重要な役目がある。
終点のミューレンは環境保護のため、自動車が原則乗り入れ禁止の静かなリゾートタウンだ。この町で消費される物資のほとんどがこの鉄道で運ばれてくる。ふもとのラウターブルンネンで鉄道からロープウェイのカーゴルームに積み込まれた荷物は、山上のグルシャルプ駅でこの鉄道に積み替えられ、ミューレンの街までやってくる。それゆえ電車は単行だが、たいていは貨車を連結している。それぞれの駅にはフォークリフトを使って効率よく荷さばきができる設備が整えられている。
ミューレンは高い崖の上にある自然条件の厳しい街だが、道路を整備してトラックで運んでくることは不可能なことではないだろう。しかしあえてそれをせず、環境負荷の低い鉄道を利用している。多少の効率の悪さやコストのこともあるだろうに、この意識の高さにはすっかり感心した。
単行の電車が小さな貨車を引く姿は、昔々の日本のローカル私鉄でも見られた。なぜか懐かしさを感じる光景。グルシャルプ付近
沿線は静かな山間で、電車が走り去ったあとには静寂が訪れる。グルシャルプ付近
ミューレン駅 乗降の合間に黙々と荷さばきが続けられる。
グルシャルプ駅に留置してあった旧型車。
CanonEOS 5DMk2, 60D, EF17-40/4, EF100Macro/2.8, Distagon35/2, Makro Planar50/2
12両の長大編成が高速で駆け抜けていく。ヴィルダースヴィル付近
昨年秋から冬にかけて季節が移りかわる頃、スイスの鉄道を旅してきた。
短い滞在での駆け足旅行だったが、スイス国鉄などの本線クラスは素通りして、いつものように私の琴線に触れるローカル線や登山鉄道、トラムなど小さな鉄道ばかり訪ねてきた。ため息が出るほど美しいスイスの自然と共に、訪れたどの鉄道も深く印象に残る旅だった。
飛行機がチューリッヒ空港に到着したのは朝7時を少しまわった頃だった。窓の外を見るとまだ夜が明けきらず薄暗い。冬のヨーロッパに来たと実感する瞬間だ。
チューリッヒ空港はアクセスが良い。今回はスイス全土で使えるスイスレイルパスを持参しているので、すぐに空港に乗り入れている鉄道駅から特急に乗りこんだ。座席が空いている限り予約の必要はない。来た列車に荷物を持って飛び乗るだけだ。実に気軽で快適。空港に降り立ってからさほどの時間がたっていないのにもう列車の中だ。
2階席のゆったりとしたシートに腰を下ろし、だんだんと明るくなってきた車窓を眺める。目指すはスイス中部のリゾートタウン、インターラーケンだ。
インターラーケンは「湖の間」という意味だそうだが、まさにそのとおり。ブリエンツ湖とトゥーン湖にはさまれた小さな街だが、アイガー、メンヒ、ユングフラウといったヨーロッパアルプスの名峰を背後にいただくベルナーオーバーランド地方の観光の拠点。この街の周囲にはいくつかの魅力的な登山鉄道がある。今日から数日間、ここに滞在し順番に訪問していこうという算段だ。 ここからでている登山鉄道を乗り継いでいくとユングフラウヨッホという、ヨーロッパ最高地点にある駅まで鉄道が通じている。そこまでの道のりは地図を見ると一つの鉄道のようだが、実際はいくつかの私鉄によって運営されており途中駅で乗り換えながらトップを目指すことになる。まずは一番ふもとを走るベルナーオーバーランド鉄道に乗車した。
ベルナーオーバーランド鉄道はインターラーケンを起点とした23キロほどの鉄道。途中駅で分岐して一方の終点はグリンデルワルド。もう一方はラウターブルンネン。両駅共に別の私鉄に接続している。軌間はメーターゲージ、ほとんどの区間が粘着運転だが、一部急勾配区間にラック式を採用している。
始発駅インターラーケンで出発を待つ列車は、メーターゲージにしては車体も大きく堂々の12両編成。これがほぼ30分に1本走っているのだから、この鉄道の需要の高さがわかる。分岐駅で6両ずつ分かれて、それぞれの終点を目指す。一部にラック区間があるとはいえ、いわゆる登山鉄道とは趣がことなりスピードも速い。列車は里山のような景観の中を走り次第に山深く分け入っていくが、まだそれほどの山岳地帯というほどではない。目指すトップのユングフラウヨッホ駅に向かう、ここはまだ序の口のアプローチなのだ。
街はずれにあるインターラーケンオスト(東)駅で出発を待つ列車。青と黄色の車体が目に鮮やかだ。
ヴィルダースヴィル付近
一部にラック区間がある。注意深く乗っているとギアのかみ合う音と若干の振動で、それとわかるが、ほとんど気がつかないレベルだ。グリンデルワルド付近
終着駅のグリンデルワルド。
もう一方の終着駅ラウターブルンネン。深い峡谷の谷底にひらけた街だ。
スイスの自然はまことに美しく、どこにカメラを向けても絵になるといった気持ちさえする。それゆえ絵はがき的な写真に終始してしまい、あとから見ると美しくはあるが、いささか単調で少しオーソドックスに過ぎる気もするが、これから何回かの連載をどうぞおつきあいください。
CanonEOS 5DMk2, 60D, EF17-40/4, EF100Macro/2.8, Distagon35/2, Makro Planar50/2
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