ヤードの隅には何がある? 氷見線伏木 服部一人
北陸に出かけた折、まだ乗車したことがなかった氷見線に乗ってみた。高岡の駅は北陸新幹線伸延にともない駅ビル工事の真っ
最中。そんな高岡駅の端っこのホームから2両編成のキハに乗車した。当初の予定では終点氷見まで行って、あとは雨晴の海岸線が有名だから、途中下車して列
車を撮影と気軽に考えていた。
高岡を出ると左にカーブ、線路の両側に家が建ち並ぶ中を列車は走る。途中、能町の駅はホームは短いけど、広大なヤードが広がっている。今はほとんど使われていないようでガランとしているが、氷見線が臨港鉄道的な路線であったことをしのばせる。
こんな感じで、草ぼうぼうのヤードの向こうに「謎」の車両が目にとまった。これは見過ごせない。
列車が伏木の駅に進入する直前、右の車窓から駅のはずれのヤードが見える。そこに一瞬、白っぽい色の路面電車風の車両が目に入った。
あれはなんだ、と心の中で色めき立つが、列車はすぐにホームに入ってヤードは見えなくなった。一瞬の出来事で車両の判別はつかない。場所柄、万葉線の旧型電車が留置してあるのかと思ったけど、形が少し違うような気がする。非常に気になる。ともあれ、これは現地を確認しなければなるまいということで、氷見まで乗車したあと、すぐに折り返し伏木で途中下車。そのまま駅を出てめざすヤードの方まで歩いて行くことにした。
ヤードは駅からほど近く、伏木港に隣接した場所だった。公道に面しているのでよく見える。お目当ての電車は、ややくたびれた姿だが、廃車になってそのまま朽ち果てていくという感じではなく、あちこち修復のあとが見える。どうやらレストア途上のようだ。このヤードには他にもいろいろとおもしろい留置車両があって非常に興味深い。近くに寄って詳細に見たいところだが、それはだめなので公道に沿ってヤードの反対側まで行き、望遠レンズでじっくりと観察した。
あとからネットなどで調べたところ、この伏木貨物ヤードはどうも 「その筋の人々」 にとっては有名な場所のようです。かつて、このあたりは製紙工場、化学工場などへの引き込み線があり、また近くに油槽所もあって、貨物ヤードはその名残のようです。現在はヤードとしての使命はほとんど終えたものの、JR貨物と北陸ロジスティックスというところが管理する場所で、各地から旧型車両を集めて整備した上で引取先に売却するということをしているらしい。そのための車両置き場として活用されているということです。
一瞬垣間見た問題の白っぽい路面電車は、静岡鉄道清水市内線のモハ65型。現存する貴重な生き残りの電車でした。長らく地元で保存されていたものが事情で存続できなくなり、場所をこちらに移してコツコツと修復が続けられているということでした。そんな貴重な電車だとはつゆ知らず、車窓からチラッと見えた電車を追って途中下車。意外な収穫があって楽しい一日でした。
修復までには、まだ時間がかかりそうだが貴重なモハ65。このヤードも伏木駅の構内表示も日本語とロシア語の併記で土地柄を感じさせます。
この日見ることができた留置車両たち。モハ65の後ろは、これまた貴重な北陸鉄道金沢市内線の路面電車2202号。こちらも保存団体によって修復作業が続いているそうです。隠れて見にくいですが、紫色の電車は万葉線にいたデ7062、手前の車掌車ヨ8000はきれいですね。
可愛らしいスイッチャーもいます。この車庫の中には、かつての茨城交通(今のひたちなか海浜鉄道)のロッド式ディーゼル機関車ケキ102がいました。
蒸気機関車の動輪とおぼしき物体も。
大量に留置されたワム38000。少し色あせたブルーの車体が夏の強い日差しに照らされて一抹の哀愁を感じさせます。
鉄道趣味の中でも引き込み線や貨物ヤード、臨港鉄道などを専門とする方々も多数おられると聞いています。自分自身も小学生の頃、名古屋の実家の近くに専売公社の引き込み線があり、日本通運の小さな黄色のスイッチャーがたまに貨車を引いていた姿が原体験としてあるので、こういうものは嫌いではありません。この世界は思わぬ発見があって、奥が深いですね。
FUJI X-E1 FUJINON XF 18-55/2.8-4 (写真はすべて敷地外から撮影)
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