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2014年5月 9日 (金)

ウェールズの小さな鉄道 2 ウエルシュ・ハイランド鉄道(下)   服部一人

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ベドゲレードを出た列車は、ふたつの大きなオメガループを描いて勾配を登って行きます。このあたりは樹林の中を走っていて、全体を俯瞰できるようないいポジションが少ない。並行する道路もまともなものがなくて苦労しました。地図を頼りに林道のような道を恐る恐る進んで、やっとこさ線路脇に出ました。見通しはきかないけど勾配があって、しばらくしてガ-ラット特有の歯切れのいいブラスト音が聞こえてきました。それにしてもガーラットは正面がちに撮ると、炭水車だけが目立ってしまってなかなか絵になりません。

Mapukcountry_2              ウェールズ地方とウエルシュ・ハイランド鉄道

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リド・ジーに停車中の列車。ここからいよいよスノードン山麓の勾配区間にさしかかります。

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リド・ジーを出た列車はスノードン山の山裾を走ります。スノードン山はウェールズ地方1番の高さを持つ山ですが、1085メートルの標高でそれほど高い山とはいえません。しかし山麓には荒涼とした山肌が広がり、独特の景観を作っています。荒々しい岩肌に木々の少ないこのあたりは遮るものもなく、ときおり強風が吹いて汽車の煙もあおられます。雲の動きも激しく、つかの間、陽が差したと思ったら、すぐ陰り雨が降り出しそうな暗い空に変わる。カメラを構えて線路際に立つ者にとっては、気が気でない天候です。

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堂々10両編成の列車は、地形に沿って敷かれた線路を右に左に蛇行しながらゆっくりと走って行きます。

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山肌にへばりつくような山岳区間を過ぎると、ふたたびウェールズ地方の里山の風景に変わります。農場や牧場が広がる中をゆったりと走ってワインファウルに向かいます。

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終点カーナーフォンに到着し、機回しをする138号。列車はこのあと車庫のある隣のディナスまで回送されて行きます。


ウエルシュ・ハイランド鉄道は1872年に現在のルートで計画され、当初沿岸部のディナスから建設が始まりました。しかしスノードン山麓の山越え区間の工事が非常に難航し、1881年に山越えの途中駅のリド・ジーまで建設したところで工事は止まります。やっとポートマドックまで全通したのは1923年。40年以上も後のことになりました。しかし世の中はすでに移り、自動車の時代がやってきていました。同区間を結ぶバスに客を取られ、苦労して全通したわずか14年後の1937年にウエルシュ・ハイランド鉄道は全線廃止になってしまいます。

廃止後長らく放置されたままでしたが、保存鉄道の機運が持ち上がり、1960年代から手始めにポートマドック側の1キロほどの短い区間が開通します。それからしばらくは進展がありませんでしたが、1997年に反対側のカーナーフォン~ディナスが復活しました。この時は開通祝賀列車としてプルマンを含む5両編成の記念列車が走ったということです。今後開通する山越えの区間のために、南アフリカからガーラットが導入されたのもこの頃です。

さらに2003年にはディナスからリド・ジーまで延長されます。残りの区間が開通し、ついにカーナーフォン~ポートマドック間がつながったのはごく最近の2011年4月のこと。念願の全通に向けての絶えまざる地道な努力の結果、全長約40キロのイギリス保存鉄道の中でも最長の鉄道ができたのです。今でも駅には全通を祝う「COAST to COAST」と書かれたポスターが貼ってあります。

まさに不屈の精神で復活したウエルシュ・ハイランド鉄道ですが、これで完成、めでたし、めでたしというつもりではないようです。この鉄道のホームページには次のような、まことに力強い言葉が書いてあります。

「線路はつながったが、鉄道は完成からはほど遠い。駅を直し、新しい客車を作り、ハーバーステーション(ポートマドック駅)の大規模な改修工事など、終わりのないタスクのために時間と努力とお金を費やす。我々の鉄道に終わりはなく、皆さんの助力によって全英のみならず、世界最高峰の保存鉄道の地位を保ち続ける。」


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カーナーフォンを出発する列車。背景に世界遺産の古城を眺め、やわらかい夕日が汽車を照らす。


CANON EOS 5DMkⅡ, 60D, EF70-200/2.8L, 17-40/4L, EF Macro100/2.8L, Makro-Planar50/2, Distagon35/2


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