「現代鉄道写真研究所」開設2周年記念座談会 Vol.2
それでは、この2年間に発表した中から、各メンバーの印象に残った記事を自薦他薦を問わずいくつか・・・。 あまり手前味噌になるといけないので、簡単にサラッと。(笑)
服部 太和田さんの新幹線ランドスケープは、日本の縮図を見るような社会派鉄道写真だと思う。出張の行き帰りにいつも撮っているのは、本当にご苦労さまです。流れるような車窓風景に目をこらし、シャッターチャンスに備える集中力がすごいと思う。10年から20年位撮り続けると、きっと良いものができるだろうね。
伊勢 日本の定点撮影のような感じだね。
梅村 写っているものに考えさせられるよね。
伊勢 新幹線で向きはどちらを撮るの?
太和田 大阪行きは海側、東京行きは山側。
梅村 1回で何カット位?
太和田 600カット位、ダメなものはその場で消す。
深川 太和田さんの「滝上り」の写真。それと新幹線ランドスケープのトラックが並んでいる写真がいかにも太平洋ベルト地帯を走っている新幹線を象徴しているなと思った。
太和田 実は、あれはあわてて横位置で撮っていて、あとで縦にトリムしている。後にタテで撮り直したけど、トラックが歯抜けになってしまって同じものはとうとう撮れなかった。
梅村 太和田さんの今回のTGVランドスケープのTGVの先頭を写しとめたのは、あれはどうやって?。
太和田 秒5コマで写して偶然撮れてしまった。線路の間があいていたのが幸いした。
伊勢 一連の組みで最初のところ、霧の中に太陽の予感を感じる写真が良かったよね。
梅村 深川さんの6×6のシリーズはいつも非常に安定していて、素晴らしい。私も北海道が好きで、よく撮りに行くけど、深川さんは北海道の大先輩。石勝線、紅葉と雪の写真が好き。フィルムカメラのハッセルで頑張っているのはすごいと思う。ただただ尊敬です。
深川 撮って現像してスキャンしてという結構手間なプロセスですが・・・。
太和田 深川さんの作品は降りしきる雪の中でも、いつも6×6判で一枚撮ってそれがすべて。露出をバラすこともできない。決定的瞬間にすべてをかけてますね。特に印象に残っているのは「白い隧道」「深雪の駅」。
伊勢 深川さんのお地蔵さんの写真、さりげなくて陰鬱にならず、ほのぼのとしていて好きです。あと、長時間露光の光跡が水面に反射しているブルーの写真。
深川 ああ、それは「夕月夜」。1周年特別企画のときに出したものです。
服部 あと深川さんには、昔のコダクロームの作品をまた時折発表してほしい。埋もれている秀作がきっとたくさんあるでしょう。例の昔の旧型客車の作品のような。
深川 あの東北本線の旧型客車は、夏の終わりの自分の気持ちを表現した30年前の写真。
梅村 深川さんの文章、あの感じ、情緒的・詩的なことば、イメージが膨らむね。ホント、ロマンチスト!
深川 あれは以前、只見の写真集を出したときに、作品にコメントを書いた流れを引きずっているかも。
梅村 服部さんは海外記事がいつも読んでいて面白い。国内記事も緻密な構図や人間の位置、計算されつくしている。撮れそうで撮れない写真。それとあの渋いトーンは、私には出せない色。(色が主体の私には)私があれをやったら何もなくなってしまう(笑)。
伊勢 スイスの登山鉄道の連載は、天気の良い日に山に登っていく旅の良さが伝わってくる。
服部 読んだ人が旅行に行った気分を味わってもらえれば成功だと思っている。
伊勢 地図も入っていて、わかりやすい記事だったね。服部 年に1度、ヨーロッパやアメリカの小さな鉄道を訪ねるのを楽しみにしていて、今回はイギリスを全10回の予定で連載してます。
伊勢 服部さんのTOKYO RAILWAYSの時の上野駅の24系25型のあの色彩、あの光線、凄かったね。
服部 あれは上野駅の持つ独特なライティングの妙かな。マクロプラナー50ミリの描写力が良かったからじゃないかな(笑)
伊勢 濱島君の中では開放で撮ったネット越しの写真が良かったね。あと一周年記念のときの黒フチの写真がいいね。
太和田 濱ちゃんは、昨年の鉄道の日の「時」のラストの一枚で使ったヘッドライトの終着駅の写真が好き。
服部 梅さんは、やはり色の世界。流れる色と光はきれいだね。
伊勢 僕は、「雨もよう」が一番気に入っている。(かつての鉄道ファン写真コンクールの)金賞作品「雨もようpart Ⅱ」だね。とくに最後の写真が良かった。ただ1枚目の写真のガラスのキズが・・・。あとモノクロのレインボーブリッジの写真もまるでチューブの中にいるようで感動しました。
太和田 梅さんの作品では、北海道の白樺のDD51の作品が印象に残っている。
深川 印象に残っている写真は、冬の音威子府の青空の踏切かな。
深川 伊勢さんのは、SL夢幻号、伊勢さんの昔のイメージをそのまま現代版にした感じ。それと、蒲原鉄道でしょうか。つり革の中にゆずが入っている写真の画面構成に感心しましたね。
伊勢 自分の作品の中では、物語を作るものと、ただ散歩しました的なものと2種類あって、物語のときの方が気合が入っている。SL夢幻号も車内からの写真は別に熱塩で撮ったものと組んでいます。「春よ来い」も力を入れました。
服部 伊勢さんは唯一ひとつのテーマで通している。犬と鉄道を組み合わせて撮っている人は、他にはまずいないでしょう。これを鉄道写真というべきか、犬の写真というべきか、まぁカテゴリーはどうでもいいけど、これからも愛情のこもった作品を発表していってください。
濱島 伊勢さん作品は先々の持続性を見据えてのコンセプト(生体を起用等)だなあ、と感じます。
梅村 よくゆずが撮り手の思った所にじっとしているよね。伊勢さんもすごいけど、ゆずもすごい(笑)。いつもゆずがいい方向を向いている。「あっち向け~」って言うの?
伊勢 ゆずは日本語が通じているみたい。そして連写するのみ。
太和田 伊勢さんのスワローエンゼル、モノクロ作品の少ない中、モノクロをベースにキハだけに色を残しているあの写真は、特に印象的でしたね。
服部 あとは、AORの音楽記事をぜひ続けてほしい。今の年代にならなければ書けない味わい深い文章だし、ゆずのブログの間にAORを入れることで、アクセントにもなるし、伊勢さんのパーソナリティが際立つよね。
梅村 お正月の富士山の写真、この色も独特。
伊勢 元旦の写真以外は、大滝詠一さんが亡くなっているので、自分の中では喪中なんだ。だから色調を押さえている。
大滝詠一さん世代の私たち…、ちょっとしんみりしたところで、今回はここまで。
気を取り直して次回、6月5日に続きます。
掲載写真 上から
太和田光一郎 「 TOKYO RAILWAY (滝上り) 」 2013.11.21
「 新幹線ランドスケープ 」 2013.12.7
深川俊一郎 「 白い隧道 」 2013.2.12
「 夕月夜 」 奥会津より 特別編 2013.6.4
服部一人 「 スイスの小さな鉄道 ユングフラウ鉄道 」 2013.2.26
「 TOKYO RAILWAYS -ターミナル- 」 2012.10.22
濱島 栄 「 Night Walker 」 2012.7.24
「時」 鉄道の日 記念企画より 2013.10.14
梅村貴子 「 LongDistance -DD51 秋に詠う- 」 2013.11.9
「 LongDistance -Blue SKY Blue- 」 2014.2.28
伊勢新一郎 「 ゆずと行く・・ ちょっとひといき」 2012.7.3
「 ゆずと行く・・ 悲しきスワローエンジェル 」 2014.1.23
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