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2014年6月14日 (土)

ウェールズの小さな鉄道 7 ウエルシュプール&スランフェア鉄道   服部一人

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訪れた日は、雨がしとしとと降り続く悪天候。けっこう肌寒い一日でした。三脚を立てカメラをかまえ、傘を差しながら辛抱強く列車を待ちます。傘はカメラを濡らさないため。自分は半分以上傘からはみ出て背中はびっしょり濡れてしまいました。それでも谷の向こうから汽笛が聞こえ、汽車が近づく気配がすると元気が出てくるものです。

本日の汽車は823号、1902年ベイヤーピーコック製。開業に際して導入された、この鉄道生粋のオリジナル車両です。客車はハンガリー製で、ここに来てからオーバーホールの上、真空ブレーキの装着や内装の取り替えなどを施しています。



ウエルシュプール&スランフェア鉄道はイギリスでは珍しい、軌間2フィート6インチ(762ミリ)のナローゲージです。日本ではナローといえば762ミリがポピュラーだったのでなじみ深いものですが、この地では非常に少ない軌間です。前身は1903年開業の私鉄で、このあたりの地域開発のために、おもに農産物などの貨物輸送を目的として建設されました。当初から762ミリのナローゲージでした。一時期、英国鉄道(British Railways)の管轄になったこともありましたが、1931年には旅客営業廃止で貨物専業に。その貨物輸送もナローゲージがあだとなり、軌間が異なる本線と接続していたウエルシュプールで貨物の積み替えなどが必要で、結局1956年には全面的に廃止になってしまいます。

地方鉄道としては、あまり芳しくない結果に終わったのですが、それから保存鉄道として再起するのは非常に迅速でした。多くのボランティアが建設に携わり、British Railwaysから路線のリースを受ける許可も出て、1963年にウエルシュプール&スランフェア鉄道として復活します。当初は途中駅のキャッスル・カレイ二オンまででしたが、その後1981年に現在の終点ウエルシュプール・レイベンスクエアーまで開通します。全長約14キロですが、バンウィバレーと呼ばれる小さな渓谷に沿って線路が敷かれ、なだらかな丘陵地帯の里山を走る美しい沿線風景です。

この鉄道の特色は、世界中のさまざまな国から車両を集めていることです。軌間762ミリがイギリスでは珍しいので、国内での調達に限界があることが理由ですが、その結果、国際色豊かな車両のバラエティーが揃いました。出自はオーストリア、ルーマニア、ハンガリー、台湾、はてはアンチグア、シェラレオネといった珍しい国からも集められました。生まれも育ちもばらばらの国から来た車両たちですが、今ではウエルシュプール&スランフェア鉄道にすっかりなじみ、ひとつの雰囲気をかもし出している感じがして、とても好感が持てます。

              Photo_5               ウエルシュプール&スランフェア鉄道 路線図


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スランフェア・カレイ二オン駅に到着した列車。このあと機回しをしてウエルシュプール・レイベンスクエアーに向けて発車準備です。

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スランフェア・カレイ二オン駅で出発を待つ列車。となりの黄色の機関車は台湾の製糖工場から2004年にやってきたハイパワーのDLです。

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蒸気機関車以外にも、多彩な車両が揃っています。
上段右左 何となく装甲車のような軍用車両の雰囲気があるDLですが、共にイギリス海軍の補給基地で働いていたそうです。なるほどね。
下段左 オーストリアのチラタール鉄道から来た木造古典客車。 
下段右 ハンガリー製の客車で、ここに来る前はスロバキアの森林鉄道で働いていました。

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雨が降って気温が下がったおかげで、蒸気や煙が鮮明に見えるのはラッキーでした。渓谷沿いに走るため、いくつかの小さな鉄橋があります。

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ウエルシュプール・レイベンスクエアー駅に到着後、折り返しスランフェア・カレイ二オンに戻る列車。以前はここから先、市街地を通って本線のウエルシュプール駅まで接続していました。保存鉄道として復活する際、市街地の用地買収は困難なため接続は見送られましたが、現在、別のルートを通って本線に接続するための協議が続けられているということです。

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ウエルシュプール・レイベンスクエアー駅で折り返すときには、給水、火床整理などをおこない、汽車もつかの間の休憩時間。乗務員たちもティータイム。

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2両の短い編成を小型機関車が牽引する、このコンパクトな感じが軽便鉄道っぽい雰囲気満点で数寄者にはたまりません。
ウェルシュ・ハイランド鉄道のような、(ナローとしては)大型機が長大編成を引くというのもすばらしく魅力的ですが、この鉄道にはやはり軽便はこうでなくっちゃと共感できる可愛らしさがあります。

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途中、何カ所かの踏切がありますが、もとより交通量の多くない田舎道、警報器などは無く、踏切のたびに汽車は一旦停止し、乗務員が降りてきて旗を振りながら安全確認して通過します。何とも浮き世離れしたゆったりとした風情です。

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本日の最終列車が霧雨にかすむ森の中に去って行く。あとに残る白煙がゆっくりとたなびいて、やがて消えて行く。
はるばる異国まで来て終日雨に降られた寒い一日でしたが、こういう鉄道情景を見たかったんだと思わせる雰囲気が、このウエルシュプール&スランフェア鉄道にはありました。美しい沿線風景の中で軽便鉄道らしい風情を満喫できて、とても幸せな一日でした。



CANON EOS 5DMkⅡ, 60D, EF70-200/2.8L, 17-40/4L, EF Macro100/2.8L, Makro-Planar50/2, Distagon35/2


当ブログもつつがなく2年を終え、3年目に入りました。今まで訪ねた鉄道、まだ見ぬ鉄道に想いは尽きません。日本のみならず世界のあちこちには、ぜひとも、この目で見ておきたい鉄道が数多くあります。
わたしの3大興味、「蒸気機関車」「ローカル線」「路面電車」を訪ねて旅行記を続けます。これからもどうぞよろしくお願いします。

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