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2014年6月24日 (火)

ウェールズの小さな鉄道 9 旅の方法   服部一人

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ウェールズにはたくさんの保存鉄道があります。今回の旅行で訪ねたのは、ほんの一部。他にも行ってみたいところばかりです。

ウェールズ北部の小さな鉄道をまわった今回の旅。蒸気機関車好き、ローカル線好きの私にとっては、毎日が夢のように楽しい日々でした。今回の撮影旅行のちょっとしたエピソードや舞台裏など、思いつくままに旅のあれこれについて簡単にまとめました。映画でいえば本編に対するメイキング映像みたいなもので、これから出かけられる方々のために、以下、参考になればと。

情報収集

日本出発前には、まずは情報収集です。どこを訪れるべきなのか、その鉄道の運転日、車両、タイムテーブルなど出発前に調べることは多岐あります。現代ではインターネットが活躍してくれることでしょう。イギリスの保存鉄道のほぼすべてはウエブサイトを持っています。サイトの充実ぶりには差はありますが、どの鉄道のサイトでも基本的な情報は掲示してあります。以下のサイトではイギリスの保存鉄道全般を簡単に紹介しています。

http://www.heritage-railways.com/

重要なポイントは特別運転の日程を調べることです。だいたい年に数回はガーラと呼ばれるスペシャルイベントが企画され、通常よりも多くの車両が走ります。レイルエンスージアスト(鉄道ファン)のためのガーラ、ディーゼルカーのガーラ、ノスタルジックトレインのガーラなど、鉄道によってさまざまなイベントがあります。旅行の日程が合えば、ぜひ、こうした機会に訪問すると多くの車両を目にすることができて満足感の高い旅行となります。

どの鉄道も三つ折り程度の簡単なリーフレットがあります。駅に立ち寄った際にもらいましょう。時刻表、運賃、沿線の地図など、撮影に必要な情報がコンパクトにまとまっていて、ポケットに入れて現地ですぐ見るのに最適です。これらのリーフレットはウェブサイトでPDFなどで入手できる場合も多いです。

撮影に役立つ書籍、地図について

イギリス入国後に次のような資料を購入しました。
ますはイギリス全土の鉄道地図、「RAIL MAP]。広げて見るタイプの地図です。路線網を知り、全体を把握するのに必要です。
それから本の形になった少し詳細な路線図、「RAIL ATLAS」。全駅が記載され、単線複線やトンネルなど、簡単な状況もわかります。
続いてレンタカー運転に必須の道路地図。何種類も出ているので、お好みのものを。ある程度小さな道も載っていて欲しいので、縮尺が少し大きくて大判のものを選びました。

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レールマップ。保存鉄道は色分けされているので一目でわかります。


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レールアトラス。路線図は眺めているだけでも楽しいです。

次に詳細な現地の地図。これはハイキング用の「EXPLORER MAP」というのがおすすめです。日本の国土地理院の地形図を見るような感じで使えます。5万分の1と2.5万分の1があり、私はより詳細な2.5万分の1を選びました。鉄道沿線の地形を知り、撮影ポイントを探すのに最適です。ハイキング用途だけあってフットパスと呼ばれる山道や遊歩道などの記載もあり、最寄りの場所から歩いて線路際まで行くのに非常に役立ちます。

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(左)運転用の道路地図。
(右)エクスプローラーマップ。撮影ポイントにたどり着くには必需品。色もきれいで見やすい地図です。この地図を頼りに、トレッキング用の腕時計に内蔵されたコンパスと高度計を見ながら線路際を目指してよく歩きました。


保存鉄道の沿線は美しい自然に囲まれていますが、どこでも簡単に入れるというものでもありません。この地方特有の羊や馬が草を食んでいる草原は、ほとんどが私有地です。フットパスはこういう私有地の中を通っている道も多くありますが、これらはマナーとルールを守った上で通行が許可されているものです。たいていは牧場の柵を越えるところに手動のゲートがあり、これを自分で開けて、また必ず閉めます。このような小さなルートも正確に記載されており、また主要道のパーキングの位置も示してあって、現地で具体的な行動を取るときに役に立ちます。

あとは「RAILWAYS RESTORED」という保存鉄道の年鑑。イギリス全土の保存鉄道がすべて網羅されていて、各鉄道ごとに所在地、運行期間、車両、路線長、軌間など簡単なデータが掲載されています。現地ですぐ役に立つという書籍とは少し違いますが、今後の訪問のための基本的な資料として現地に行ったときにお求めになるのがよかろうと思います。毎年改訂版が出ているようで、彼の地での保存鉄道というものの人気と社会的認知度がわかります。

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レールウェイ レストアード。数の多さにただただ感心します。

これらの資料をリバプールの大きな本屋で買いましたが、ロンドンや他の大都市でも、大きな書店ならあるでしょう。ものによってはAmazonなどにも出ているようです。鉄道関係の書籍などは、各保存鉄道の主要駅で購入するのも便利です。たいていオリジナルグッズなどを扱う売店と書籍のコーナーがあって、さまざまな鉄道関連の本が置いてあります。その品揃えは都会のちょっとした書店の鉄道関係コーナーをしのぐほどの充実ぶりです。私も気軽に立ち寄ったつもりが、つい立ち読みに熱中してしまい、あとの撮影に支障をきたすということがありました。

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(左)現地の駅で購入した書籍の一部。帰りの荷物が重くて大変でした。
(右)日本語の書籍でもイギリスの保存鉄道に関するものがあります。読み物としても楽しめるので、出発前のイメージトレーニングとして、その鉄道の概要や雰囲気を知るにはとてもいいものです。



国内の移動、レンタカー

イギリスへの入国は多くがロンドンでしょうが、今回のようにウェールズ北部を訪ねる場合、ゲートシティとなるのはマンチェスターかリバプールが便利です。国内線で移動してもよし、私の場合、ロンドンに入国したその日に、鉄道を使ってビートルズで有名なリバプールまで特急で移動しました。約300キロ、2時間少しでした。こうした鉄道移動を考えている場合は「イギリス鉄道パス」(BRIT RAILPASS)が便利だと思います。イギリスの鉄道は定価でまともに買うとけっこう高いです。ヒースローの飛行場からロンドン市内に出るだけでも、ヒースローエクスプレスを使うと約21分でまことに快適、かつ快速ですが3500円以上もします。国内移動を鉄道でするつもりならレイルパスは元が取れそうな気もします。このパスは日本で購入する必要があります。事前に準備しましょう。

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(左)ロンドンから到着した特急列車。リバプール・ライムストリート駅にて。
(右)鉄道パスと、おなじみトーマスクックの時刻表。


保存鉄道は公共交通機関では行きづらい田舎にあることもしばしばです。今回はリバプールの空港からレンタカーを使用しました。国際的なネットワークのレンタカー会社なら日本からネットで予約できます。この地ではレンタカーは日本よりカジュアルな感じです。お店に行って予約してある旨を伝えると、すでにタイプされた書類がでてきて、注意事項を確認してサインするだけ。パスポートと国際運転免許のコピーを預けるだけで実に簡単です。ものの5分もかからず手続きが済むと鍵を渡されて「○○番のパーキングにとめてあるから」と素っ気なく言われて、あとは乗り出すだけ。返却時も同様。空港の近くでガソリンを入れてそのまま同じ場所に駐車して鍵を返すだけ。日本のように立ち会いでボディの傷の有無を確認するなどということもしません。

ご存じのようにイギリスは日本と同じ、右ハンドルの左側通行。運転には大きな障害はないです。市街地こそ車の多さに気を使いますが、リバプールからウェールズに向かう高速道路も無料。ウェールズに入ってしまえば、のどかな田舎道で交通量はそんなに多くありません。幹線を離れるとすれ違いに困るような狭い道もときにはありますが、ウェールズは美しい土地です。風光明媚な景色を見ながらのドライブは実に快適でした。

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(左)今回の旅のお供、フォード・フォーカス。
(右)ウェールズの典型的な幹線道路。交通量はさほど多くなく、北海道をドライブしてるような感覚でした。


運転マナーはおおむね良好。かなり飛ばす車もありますが、こちらが普通に走っていると、さっさと追い抜いていってくれるので気にすることはありません。少し大きな町には有料の公共駐車場、また主要道路には景色のいい場所などにパーキングが設けられているので、駐車はそちらへ。田舎道などは狭くて路駐するスペースはないし、駐車マナーはけっこういいような気がしました。保存鉄道も自動車で来るお客のために有料駐車場を駅のそばに設けている場合がほとんどです。車で撮影するにせよ、やはり1度は乗ってみたいですよね。

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(左)スランベリスの駅前駐車場。みんなここに車を置いて鉄道に乗ります。
(右)ウェールズは羊毛も有名です。ここでは羊優先なのでじっと待ちます。


宿泊、食事など

ウェールズはスノードン国立公園を始め、自然の豊かな土地です。リゾートや保養地は各地にあり、観光はこの土地の重要な産業です。したがって宿泊する所はたくさんあります。だいたいが撮影旅行なら朝早くに出て、帰宅は暗くなってからということも多いでしょう。ホテルにお金をかける事も少ないかと思いますが、私も手頃なB&B(ベッド&ブレックファースト)ばかり利用しました。ネットを使って日本出発前に予約しました。質素な宿はだいたいが狭く、エレベーターもないのが普通で、時には重いトランクを持って階段や入り組んだ廊下を歩くことになります。でもホットシャワーが出て、ネットがつながれば特に不満もなし。十分です。

他にもモーテルという名の自動車旅行用の施設もあります。これはたいてい歩いて行くには不便な町はずれにあり、モダーンではあるが、いたって実用的でシンプルな内外装の建物です。部屋に2ベッドとミニキッチンが付いていることが多いです。家族で自動車旅行して食材などを持ち込んで旅をするスタイルなら安上がりにすむようにできています。こうしたところを利用するなら、オフシーズンならだいたい1万円以下で泊まれるところも多いでしょう。

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(左)ポートマドックで泊まったホテル。小じんまりとして落ち着けました。
(右)ポートマドック駅のスプナーズ・カフェ。ここで何度も朝ご飯を食べました。


食事ですが、朝ご飯はWelish Breakfast(ウェールズ式朝食)で決まりです。やたらとボリュームのあるご飯ですが、1日外で撮影するにはしっかりした朝食は基本。ホテルで出てくるところもあれば、なければ外のカフェなどで同じようなものが食べられます。昼は撮影中で忙しく満足な時間が取れません。朝出発する前に近所のキオスクなどでサンドイッチやお菓子を買ってでかけます。

さて夕食ですが、これもゆっくりとディナーを楽しむということはしませんでした。ファーストフードかきちんとしたレストランならあるのですが、その中間、日本でいえば食堂や定食屋といった手頃な感じのお店はなかなか見つからないものです。旅行者なので土地勘がないだけなのかもしれませんが、夕食はもっぱらお総菜を買ってきて部屋で食べました。便利なのが「TESCO LOTUS」という全国チェーンのスーパーです。地方でも夜8時くらいまでやっていて、ここのお総菜コーナーでサラダやチーズなどといっしょにビールを買ってきて、今日撮った成果をパソコンで眺めながら食べれば、私はけっこう幸せです。

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(上)スーパーの「テスコ」。これはリバプール店ですが、地方のお店は大きな駐車場があって車で行くには便利です。
(左)これがウエリッシュ・ブレックファースト。お腹いっぱいになります。
(右)「テスコ」で買った本日のディナー。イギリスはビールの種類がとても多くて、毎日利き酒大会でした。


それでもたまには暖かいおかずが食べたいと思う日もあります。特に天気が悪く寒い日には、1日終わって帰ってくると体も冷えてけっこうしんどいものです。こういうときにはケバブや中華料理のテイクアウトをよくやりました。イギリスは多民族国家です。アラブ系の人がやっているケバブ屋は地方でも見かけました。中国人は世界中どこにでもいるので、これも重宝します。

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カーナーフォンにあったテイクアウト専門の中華屋。まあまあおいしかったですが、どれも似たような味でした。


撮影など、いくつか感じたこと。

駅のホームなどは他の乗客に迷惑をかけない限り、けっこう自由に撮影できます。日本のような重装備ではないにせよ、鉄道ファンとおぼしき人はよくいます。彼らを見本にして行動していれば、だいたい問題ないことでしょう。カメラをかまえていると画面に入らないように遠慮してくれる人もよくいました。にっこり笑って気持ちよく撮影しましょう。注意が必要なのは沿線での撮影です。保存鉄道の線路には全線に渡ってレール沿いに柵があります。場合によっては撮影の邪魔になることもあるのですが仕方ありません。これは通常の営業鉄道とは別のカテゴリーである保存鉄道に法律で義務付けられたものだそうです。当然ですが、この柵の中に入ってはいけません。フットパスや踏切が線路を横切る場所は通行できるようになっていて表示が出ていることもあります。指示に従って安全第一で楽しみましょう。

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(左)踏切の横の看板には、「よく見て、聴いて、注意して渡れ。」と書いてあります。
(右)柵は網だったり、木製だったり、ワイヤーだったりしますが、撮影には悩ましいものです。でも仕方ありません。上手に工夫しましょう。


保存鉄道の維持運営にはお金がかかります。現地ではお金を落とすというのも大切なことだと感じます。もちろん乗車するのが基本ですが、ほかにも書籍やオリジナルグッズをおみやげに買ったり、駅のカフェで食事したり、車内販売でコーヒーを買ったりと貢献できることはいくつもあります。私は旅先でおみやげを買うことは少ないのですが、鉄道関連だとつい財布の紐がゆるみます。じっさい今こうして原稿を書いている横には駅で買ったカレンダーがかかっています。汽車の絵が描かれたワイングラスで飲む酒は、これもまたいいものです。安いワインでもなんだか楽しくなります。こうして帰国してからも良き思い出の楽しみが続きます。

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(左)車内販売のメニュー。ビールもワインもあります。
(右)車内に置いてあった、汽車のレストア費用を集める寄付袋。

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この地の人々は古来よりイングランドとは別の文化背景があり、ウェールズ語という言語を話します。リバプールから車を運転して来ると、ウェールズに入ったとたん道路標識も2ヶ国語となります。鉄道の看板もリーフレットもみんなバイリンガル。このウェールズ語、アルファベットを使って表記しますが、見慣れない綴りに聞き慣れない発音でまったく別の言語です。


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ウェールズのナロー保存鉄道は、前身がスレート運搬鉄道だったところが多いです。かつて特産だったスレートは、今でもさまざまな場所に使われています。規則正しい方向性によって割れる特性があり、人の手作業で最大1ミリ程度の薄さまで割ることができるそうです。


CANON EOS 5DMkⅡ, 60D, EF70-200/2.8L, 17-40/4L, EF Macro100/2.8L, Makro-Planar50/2, Distagon35/2



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