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2015年6月 1日 (月)

ブログ開設 3周年 & レイル・オン結成25周年記念企画   服部一人

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 第1回写真展(1990)出品作「汽車に乗って」より


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近頃の作品 広電769(元大阪市電1828)現役の姿。769は今年になって廃車、保存のため譲渡された

Now & Then

1990年当時は自分は広告会社の会社員。バブル経済の余韻が残っていて仕事は忙しく、1年のうち半分以上を出張しているような生活だった。レイル・オンのミーティングや写真展の会期中に東京にいて出席するということが、けっこうたいへんだったことを覚えている。

今回持ってきたのは第1回写真展で発表した8枚の中から4枚だ。すべて海外での撮影である。仕事はたいへん忙しかったが、学生時代からの「旅行好きの気分」はなかなか押さえがたく、写真展の前年の年末年始休みに思い切って長期休暇を取り、シベリア鉄道に乗車した旅がもとになっている。

出張続きでたまりにたまった代休に有給をくっつけて3週間ほどの休みを工面した。実はシベリア鉄道は学生時代に1度全線乗車しているのだが、その時の印象がよかったので、「あー、またあんな汽車旅がしてみたいなー。」という望郷(?!)の念が日々仕事で忙殺される中で芽生えてきて、ついに出かけてしまったのである。この時の旅のコンセプトはひとつ、「飛行機を使わずに花の都パリまで行く」というものだった。

実際の旅程は、大阪港から船で上海に渡り、そこからはひたすら鉄道を使って北京→ウランバートル→イルクーツク→モスクワ→ワルシャワ→ベルリン→パリという行程だった。行く先々の主要都市では途中下車して1、2泊ずつしては駅や街のスナップ撮影を楽しんだ。こういう長い汽車旅をしていると乗っている車内が生活の場になる。特に北京~モスクワ間は1週間くらいかかるので、同じコンパートメントの乗客同士で少し会話もするし、乗務員とも顔なじみになる。そういう人物写真もけっこう撮っているのだが、この写真展では人物が大きく出てこないスナップショットのみで構成している。

この時の機材はライカM2、ライツミノルタCL、レンズはスーパーアンギュロン21/3.4、ズミクロン35/2、Mロッコール40/2、テレエルマリート90/2.8。それから6×6のローライフレックス、クセノタール75/3.5を持って行った。フィルムは35も120もほとんどモノクロ。コダクローム64を10本ほど持って行ったが、5、6本しか撮らなかった。当時はよくモノクロで撮っていたのだ。通常、鉄道写真の機材はニコンF2、FM2、ペンタックス67を持ち出すこともよくあったので、この旅では長い移動を考慮して小型軽量化を意識したことになる。

一方、最近の写真としては広電の旧型車を撮ったものだ。別にどうということのない走行写真であるが、近頃はこういう撮り方をすることが多い。「こういう撮り方」とは何かというと、35〜100ミリくらいを使い、車両全体を入れて、さらに周囲の環境もわかるようにやや引き気味の構図で、比較的パンフォーカスで撮る、といった感じだ。なぜかといえば、時間がたってあとから見た時にディティールを見る楽しみがあり、時代を感じることができるからだ。

一般に写真は古くなるとだいたいよく見える。被写体そのものの持つ力や希少性に魅力を感じるようになる。鉄道写真でも同様だ。今はなき車両も魅力的だが、画面の隅の方に写っている人物の服装だったり、背景の町並みや走っている車だったり、主題とは別のところからもおおいに時代の雰囲気を感じて、思わず長く見入ってしまうことがよくある。今あたりまえにあるものでも、変化の早い世の中では10年もすると変わってしまい、いつのまにか姿を消しているものもある。

そんなことを考えながら、淡々と鉄道車両を取り巻く環境の記録写真を撮っているのかもしれない。でも、最近は昔のような汽車旅のスナップ写真を撮らないのかといえば、そんなことはない。たとえば当ブログでも2013年11月5日の記事(こちら→http://blog.rail-on.com/2013/11/post-d787.html )のようにときどき出てくる。

さて、この2枚を並べて、昔と今で変わったところ、変わらないところをちょっと考えてみた。まず変わらないところ。

1 蒸気機関車、ローカル線、トラム という私にとっての三大テーマは不変。
2 極端な超望遠や超広角はほとんど使わない。
3 海外の鉄道に興味がある。
4 紙の写真が好きだ。

1は変わりようがない。およそレールの上を走るものなら何でも興味はあるけど、この3つは特に琴線に触れる。今も昔も特急電車はあまり撮らないし、新幹線も大好きでよく乗るが、撮影はほとんどしない。

2は先に述べたことと関わることだが、鉄道車両の環境写真を撮るには普通くらいの焦点距離がちょうどいい。車両の部分をクローズアップした写真もほとんど撮らないし、俯瞰で小さく写っている写真もほとんど撮らない。

3は昔も今も旅好きな性格は変わらない。知らない場所、まだ見たことない車両など興味がわいて、つい行きたくなる。しかし自分にとっての海外鉄を追い求める意味は、この25年で微妙に変化した。昔はとにかく海外に行ってみたかった。まだ見ぬ土地、未知の鉄道など、とにかくこの目で見たかった。

今もその気持ちはあるが、海外に行く1番の理由は別だ。自分が心地よいと思える鉄道風景、たとえば蒸気機関車の全盛時代を感じるような鉄道、ひなびたローカル線を走るレトロな車両、古い町並みが残る中をゆくトラムなど、こういったものは日本よりも海外に行った方がたくさんある。今はただ見たいものを追い求めた結果、たまたま海外に行っているという具合だ。

4は昔は暗室でせっせと自分でプリントしていた。ポジで撮ってライトボックスの上でルーペを使って見るのは好きじゃなかった。手に取れるくらいの大きさの印画紙に焼くのが1番好きだ。今もモニターで見るのは好きじゃない。インク代を気にしながらもせっせとプリントしている。カラーでも細かい部分をRAW現像で調整できるし、紙の種類も非常に豊富で、銀塩時代よりもカラーに関しては表現の幅が広がったと感じている。

次に変わったところ

1 モノクロが減ってカラーが多くなった。
2 車両への興味が非常に強くなった。
3 ビデオを撮るようになった。

1はフィルムからデジタルになって大きく変化した。デジタルで撮ってモノクロにプリントすることは今のところない。デジタルで撮ったものは基本的にすべてカラーで発表している。先に書いたようにRAW現像でけっこう細かく調整する。昔も今も現像やプリントに凝るのは好きなのだ。いつもブログでご覧いただいてわかるように、コントラストも彩度も少し下げて地味な感じのトーンが好みだ。お手本とする色調は1970年代くらいのネガカラープリントだ。

でもモノクロへの愛着は失っていない。何台もフィルムカメラを所持して、本数はずっと減ったものの今もフィルムで撮影は続けている。暗室で現像もプリントも自分でやる。細々とではあるが、これはおそらく一生続けるだろう。フィルムで撮ったものはブログでは発表しないが、そのうちグループで写真展やるようなことがあれば、きちんと出そうと思っている。

2は自分でも意外な心境の変化だった。昔はある特定の車両に興味がわいて追っかけるというようなことはしなかった。今は好きな車両があって集中的に撮ることがある。磐越西線のC57しかり、3年連続でお正月に出かけた阪堺電車のモ161しかりである。だいたいが自分が好きになるのは古い車両ばかりだが、何か写真的な技巧を凝らして表現するような鉄道写真を撮ろうとは考えない。好きな車両がきれいに写っている姿が見たい。

私が感じる古い車両の魅力とは何か。それはスタイリング(外観)につきる。美しい形、味わいのある形がすべてだ。もうすこし付け加えれば、車両全体から醸し出す、たたずまいに魅力を感じる。車両の乗り心地だとか音だとか、そういったものはさほど重要ではない。車でも同様だ。スタイリングがすべて。高性能なことには興味がない。現在市販されている車にはほとんど欲しいものがないが、30年以上前の車だと欲しいものがいくつもある。

3は大きな変化だ。これは最近のデジタルビデオの発達、およびデジタル一眼で動画も撮れるようになったことが大きく影響している。ついでにいえば自分の本業はフォトグラファーだが、もう10年以上前からビデオをやっていた。特にここ数年はビデオの仕事が増えている。そんなわけで編集環境なども含めてビデオ制作のプロセスに慣れて気軽に作るようになったのだと思う。鉄道ビデオは、これはやってみると実におもしろい。やはり動いて音が出るものはビデオに向いている。特に好きな蒸気機関車などは感涙ものだ。

最近はパナソニックGH4を使って4Kムービーにはまっている。古いライカレンズを使って柔らかいゆったりしたトーンが作り出せるのも気に入っている。近頃は撮影には必ずビデオカメラも持参して写真と同時に撮影し、帰宅してからショートムービーをよく作っている。こちらもモノクロ写真と同様、ほとんど発表してないが、個人の楽しみとしてはかなり満足している。夜、大画面のテレビで自分の撮ってきた好きな車両を眺めながらお酒を飲んでいる時間はけっこう幸福である。

以上、いろいろと比べてみたが、トータルとして本人の率直な感想を言えば、この25年で変わったか、変わらないかと問われれば、本質的にはたいして変わっていないという気持ちだ。同じ人間がやっていることだから、そうそう変わりようがないのかもしれない。

昨今の鉄道写真を取り巻く社会や環境は25年前と大きく違う。鉄道ファンのみならず一般の方々の見方も大きく変わった。もはや鉄道趣味はマイナーでもなく、趣味の王道をゆく大人の楽しみのひとつかもしれない。鉄道写真の裾野やマーケットが広がり、鉄道写真家の数も増え、鉄道写真の種類や表現も実に多様になった。こうした変化のほとんどを、自分は非常に好意的にとらえ、まことに喜ばしいことだと心から思って興味深く眺めている。

その中で自分の撮っている写真は、流行でもなくメインストリームとも違うのだろうけど、そんなことは気にかけたこともない。別に仕事でやっているわけじゃなし、好きなものを好きなように愛情を込めて撮影するだけだ。


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                                               VOL.625



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