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2015年6月11日 (木)

ブログ開設 3周年&レイル・オン25周年記念企画  深川 俊一郎

あの頃
あの頃の自分・・・こだわっていたことは山ほどあって話し出したらきりがない。
まずは被写体。
古きよきもの・去り行くものには惹かれるが、結果としては、好きだったものが去っていった。そう、形あるものはいつか必ずなくなるのだ。
表現はどうか。
自己満足の極致だったかもしれない。でも自分が納得せずに誰を感動させることができようか。
そして機材・感材。
好きだったミノルタがAFへと転換してしまい、材質感のあるコンタックスへと乗り換えた頃。どちらも私の常用フィルムであるコダクローム25の持ち味を最大限に発揮してくれた。
後ろ向きの話は好きではないけれど、未来のために少しだけ振り返ってみたい。


8208_2
帰途

鉄道車両そのものへの興味と、作品づくりは特に意識して分別していたと思う。
被写体への強いこだわりは紛れもなく車両そのものに対する興味なのだが、作品づくりではあえてそれを前面に出さず、印象として表現することに逆にこだわった。
その反動は、もしかしたら今になって“素直に表現すること”を教えてくれたのかもしれない。
作品づくりは今でもそうだが、特にあの頃は旅人の視線であった。
そこには常に郷愁(ホームシック)が漂っており、特にそれを強く感じたのが、昼間の撮影が終わって乗った列車の室内灯が白熱電球だった時だ。
薄暗くて、オレンジ色に鈍く光る、陰影の車内に入った時、涙がこぼれそうなほど心が揺さぶられた。
私にとってはこの時間からが撮影の本番なのであった。

石北本線 呼人 minolta XD MD TELE ROKKOR 135mmF2.8 KM



今の自分・・・こだわりは一層強くなっている。
去りゆくものを探しては追っている自分がいる。形あるもののみならず、心に残る場面という意味でも・・・
そして少しは考え、周りをみる余裕ができたのだろうか。
コダクローム25がなくなってから、機材は6×6版メインになった。もちろん銀塩写真で。私にとって6×6は、実は祖父譲りのローライフレックスで中学生の頃から使っている、馴染みのあるフォーマットだ。
スクウェアが内面的な表現になり過ぎないように、収まりすぎないようにしたいと思っている。
“写真は引き算”とは昔から言われていることだが、当時はどちらかというと望遠(35mm版で135mmくらいのレンズ)で切り取ることが多かった。
今は広角(6×6版で50mmくらい)でそれを心がけている。なかなか実現が難しいけれど。


14076
ともしび


自分が旅人であるならば、見る人がそこに行きたくなるような作品を、そこに連れて行ってあげたい気持ちを大切に撮りたいと思っている。
露出は以前のギリギリまでのアンダーから、少しオーバー気味にディテールを生かす表現に変わった。
夕景・夜景は今のデジタルでは感度を上げて手ブレ防止にすれば簡単だろうが、私はもともと1秒くらいなら平気で手持ち撮影だ。
それにしても、もう絶対に味わえないと思っていた白熱電球の車内が、まだ残っていた。
心に秘めたささやかなこだわりを求めて、海外にまで繰り出してしまったのである。

大連市電 華楽広場 HASSELBLAD 500CM Distagon CF 50mmF4 T*

003
Vol.630

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深川俊一郎」カテゴリの記事

コメント

目の前に提示された過去が、艶やかに優しく輝いていますね。

こんばんは。いつもご覧いただきありがとうございます。
いいなと思うかけがえのない光景を、これからも追っていきたいと思います。

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