
ロールワーゲンの貨車を含む混合列車がやってきた。数十年前の現役時代を再現する実にいい演出です。ロールワーゲンとは軌間の違う車両を乗せて運ぶ貨車のことです。2両目の大きな貨車が乗っているのがそれです。標準軌からナローに荷物の積み替えの手間を省いて、貨車をそのまま運んでしまおうということです。ドイツのナローゲージではよく見られた手法のようです。僕は動いている姿を見るのはこの時が初めてでした。このデコボコな編成がナローらしくていい味出してますね。
こうして見るとロールワーゲン上の標準軌の貨車とナローゲージの機関車の大きさの違いがよくわかります。機関車が何とも小さく見えます。
鉄道の日は、ご存知の通り1872年に新橋~横浜間に初めて鉄道が走った日です。今年は数えて143年目。一方ドイツの鉄道は今年180年。そして今回訪ねた、この小さなデルニッツ鉄道は今年131年目を迎えます。毎年ヨーロッパの小さな鉄道を見に行く旅、昨年はイギリスのウェールズの保存鉄道でした。(こちら→http://blog.rail-on.com/2014/04/1-e429.html )
今年はドイツ東部のザクセン州。ザクセン州はドイツの他の州に比べてナローゲージ鉄道が多く敷設されていました。おもに19世紀後半、まだここがザクセン王国だった頃に建設が始まり、1920年までにはザクセン州全体で500キロを超えるナローゲージの鉄道網があったそうです。戦後の東ドイツの社会主義時代を経験したこともあって、西側に比べると比較的近年まで残っていた鉄道もあり、現在もいくつかが保存鉄道として蒸気機関車を走らせています。今回から連載で、その訪問記をお届けします。
ザクソンメイヤー タイプⅣKを訪ねて。
9月、暑かった夏から秋へと季節が変わろうとしている頃、ドイツ東部、ザクセン州の小さな鉄道を訪ね歩く旅に出た。ドイツを訪れるのは4年ぶり。以前にやはりナローの蒸気鉄道をご紹介したことがあったけど、(こちら→http://blog.rail-on.com/2012/08/post-7992.html ) 今回は前回に行けなかったところばかり、せっせと訪ねてきました。何しろザクセンはナロー蒸気の宝庫、限られた日程ではどれもこれもというわけにはいかなかったんですが、それでもかねてより行きたかったところをいくつも回り、念願果たして満足のいく旅でした。
デルニッツ鉄道はちょうどお祭りのある週末に訪ねてきました。祭りの名目は「ⅠK型蒸気機関車と開通130周年記念」といった感じ。ⅠKについては明日のブログで紹介します。開業は厳密には今年は131年目なんだけど、昨年に続き盛大にお祝いしようということでしょう。この手の保存鉄道は客集めのために定期的にイベントをしますが、こういう日が訪問のチャンス。この時も通常より倍以上、列車本数があり、かつ蒸気牽引列車が多数設定されるという、我々のような数寄者とってはたまらない一日ですね。
なんといってもお目当てはザクソンメイヤーと呼ばれる関節式機関車。動いている本物を見るのは初めてです。僕はマレーとか、ガーラットなんかの物々しい関節式機関車が大好きなので、これもなかなか琴線に触れるものがありました。今風の言葉でいくと「萌える」というやつですかね。シリンダーが内側で向かい合わせになっているのがユニーク。たいへん気に入りました。
これがザクソンメイヤー 99 1574。形式名はⅣKと呼ばれるタイプです。1912年の製造ですが、1960年代にボイラーを含む大幅な更新修理を受けているそうです。細身のボイラーがなかなかキュートでいいスタイルです。
朝のミューゲルン機関庫を出発する99 1574。さあ、これからお祭りの一日が始まる。
この日は特別運転なので、乗車券はオーシャッツ~グロッセン全線乗り放題のパスが12ユーロ。お祭りでたくさん蒸気が見られたので、これくらいは安いものです。
テイルハイム駅に進入する混合列車。ここは森の中にあって静かな駅。
ミューゲルンは広い構内に白樺並木が所々にある気持ちのいい駅。ところでこのイベントで日本人のファンの方、3人とお目にかかりました。いずれの方も、こんなドイツの片田舎のイベントにお出かけになるくらいだから、相当気合いの入った「鉄」の方々です。まぁ、僕も同類ですけど....。
このうちお二方はレンタカーでいらっしゃったので、1日同乗させていただきました。おかげさまで効率よく回れて写真たくさん撮れました。その節はお世話になりました。ありがとうございました。
ミューゲルンの駅には、あちらこちらに東独時代の遺品も打ち捨てられていて、これもゆっくり見ると興味深そう。
お祭りなので5インチのライブスティームも登場。これはコッペルかなぁ。向こうにはチューニングして気合いの入ったトラバントも展示してある。なかなか楽しい。売店もいろいろ出ているので、お昼ご飯はドイツ名物でかいソーセージとパン。ついでにビールといきたいところだが、手元が狂って写真失敗するといけないので自重。保存鉄道に行ったら、経営の一助となるべく、お金を落とすことも重要と自分に言い聞かせて雑誌と本を数冊購入。帰りがちょっと重かったけどね。
蒸気列車の合間にディーゼルも走ります。このディーゼル機関車、何となく珍妙です。車軸配置が1-B-1という不思議なものでした。
夢中で乗って撮ってを繰り返した一日が終り、最終列車で帰路につきます。天気もよかったし、満足満足。
デルニッツ鉄道 現地のガイド、アクセスなど
DBとデルニッツ鉄道の接続駅のオーシャッツは、DBのドレスデン〜ライプチヒを結ぶ本線上にある。快速REでドレスデンからは約1時間、ライプチヒからは35分程度。REは1時間に1本程度ある。
DBのオーシャッツ駅はオーシャッツ市街とは少し離れたところにあるため、駅周辺は特に何もない閑散としたところだ。DBの駅に接してすぐ南側にデルニッツ鉄道のオーシャッツ中央駅がある。かつてDBと貨物のやり取りがあったため、構内には標準機とナローの3線区間もある。ここから鉄道の中心地であるミューゲルンを経てグロッセンまで約16キロの750ミリナローゲージである。
平日はグロッセン〜ミューゲルン間が1往復半、ミューゲルン〜オーシャッツ間が4往復程度で、いずれもDL牽引。シーズン中の週末に蒸気が走る日が設定されており、さらに年に何日か、今回のようにイベントのある特別な日がある。今回の訪問時はグロッセン〜オーシャッツ7往復、ミューゲルン〜オーシャッツは区間運転も含めて8往復以上というダイヤだったので通常よりかなり多い。やはりこういう日を狙って行くのが得策。詳しいダイヤはホームページで調べてください。→http://www.doellnitzbahn.de/cms/
おおざっぱに言ってオーシャッツ中央駅からオーシャッツ南駅までは市街地を走る。この区間には比較的大きな道路を渡る踏切もあるし、市街地をバックに走る列車が撮れる。オーシャッツ南を出てナウンドルフの手前までは雑木林や森の中。カーブもあっていいポイントもありそうだが、木々に囲まれて光があたりにくいのが難点で、並行した道路がない区間もあって、ポイントまでたどり着くのは骨が折れるかもしれない。
ナウンドルフから先ミューゲルンまではひらけた牧草地。ミューゲルンを出て少し市街地を走ったあとはなだらかな牧草地の中を、道路と並行して走り、終点のグロッセンにいたる、といった沿線風景。
機関庫はミューゲルンにあり、ここの構内はとても広い。車庫も煉瓦積みでなかなか味わい深い。終着グロッセン構内にある採石場からのトロッコのホッパーも必見。 (2015年9月現在)

デルニッツ鉄道路線図 2015年9月現在、ケムニッツに行く路線は休止中です。
明日は、これまたすばらしいⅠK型機関車を中心に、引き続きデルニッツ鉄道を紹介します。お楽しみに。
CANON EOS 5DMkⅡ, EF70-200/4L, Makro-Planar50/2 Distagon35/2
VOL.698
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