トラムの走る町8 リベレツ チェコ(上) 服部一人
リベレツのトラムには3線区間がある。市内の一部は標準軌で今どきのLRTも走る。一方お目当ての「路側軌道」方面はメーターゲージである。
楽しき路側軌道を求めて
昨年、ザクセンの小さな鉄道を見て歩いた際、ちょいと足を伸ばしてドイツ国境に近いチェコ北部の都市リベレツのトラムを見てきた。ここは「Rail Magazine」の編集長名取さんがやっているブログに以前載っていたものだ。このトラムの魅力は、なんといっても路側軌道を走る田舎電車の風情である。日本の路面電車でも市街を離れ郊外にさしかかると、道路の中心ではなく路肩に沿って線路が敷かれているところがある。狭い田舎道の片側に線路があり、道路との境には特に柵があるわけでもなく、道路脇をガタゴトと電車が走っているような風情、それが鉄道情景としての路側軌道の楽しさである。
ブログに紹介されたリベレツの路側軌道は田舎電車の風情が満点で、すぐにでも現地に行きたい気持ちになったものだ。やっと昨年訪れることができて、のどかな雰囲気をじゅうぶんに堪能することができた。さいわい現地は大きな開発もなく、ブログで紹介された頃とさして変わらない田舎の路側軌道の楽しさにあふれていた。今回と次回に分けてリベレツのトラムを紹介するが、今回はまずリベレツ市内と終点のヤブロネツ ナド・ニソウあたりをご覧に入れます。
リベレツのトラムは市内と郊外の路線があり、お目当ての路側軌道は郊外線の方。約10キロ離れた隣町のヤブロネツ ナド・ニソウというところに行く途中にある。この系統番号11番はいわゆるインターアーバンで、トラムというよりは近距離都市間輸送の性格が強い。
チェコ鉄道のリベレツ駅前にはその名も「駅」という停留所があり、ここよりひと駅行って鉄道と立体交差した先にあるビアダクトが起点である。終点のヤブロネツ ナド・ニソウまでの区間、チェコ鉄道も並行して走っているのだが、トラムの方が本数が多く、また停留所間隔も短いので利用者はけっこう多いように感じた。
リベレツトラム11系統概念図
鉄道橋の下をくぐって起点のビアダクトに到着。11系統の車両はすべておなじみのタトラT3。2両編成が基本。 鉄道橋を反対側から見たところ。
ビアダクトでループして方向転換。
こちらは反対側の終点ヤブロネツ ナド・ニソウ。公園の中にループがある。この緑と白に黄色のラインが入るのがリベレツの標準塗装。ほかに広告車両も多い。
リベレツのトラム アクセスと現地ガイド
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リベレツはチェコ北部の人口10万を超える都市だが、首都プラハからのアクセスは不便で時間がかかる。隣国ドイツのドレスデンから列車で訪れるのが得策である。ドレスデン中央駅からは第3セクターのTRILEXという鉄道が国境を越えてリベレツまで直通列車を走らせている。1日約9往復。所要時間は2時間ちょいである。(2015年9月現在) これに乗るとドイツ側の国境の駅ツィタウを出ると小さな川を渡って、わずかの区間ポーランド領内を走り、その後チェコに入るのである。
現在はEU内はパスポートコントロールがないので通過するだけだが、おもしろいことにポーランド領内に入ると明らかに列車のスピードが落ちる。窓から見てもドイツにくらべ保線状態が悪く、やや振動が多くなった感じだ。やがてチェコ内に入ると少しスピードを上げてリベレツに到着する。このあたりは国境が入り組んでおり、歴史上国境が移動し、領土を取ったり取られたりを繰り返してきた。リベレツもかつてドイツ領だった時代もあり、ドイツ時代はライヒェンベルクと呼ばれていた。
このルートで入国する際の注意点として、リベレツ駅の構内には見たところ両替所がない。チェコはEUだが独自通貨のコルネを使っているのでユーロでは買い物1つでも困ることになる。何らかの方法で事前にコルネを入手しておいた方がよさそうだ。
トラムの料金は市内が1ゾーン、ヤブロネツ ナド・ニソウまで行くと2ゾーンで値段が違う。途中下車もするし、言葉も通じない土地でいちいち切符を買うのも大変なので僕は1日券を買ったが、これがなかなかたいへんでした。
ナイゼ川という、この小川がドイツとポーランドの国境。国境といってもこんなもんです。
チェコ鉄道のリベレツ駅。左側がややレトロなチェコのDC。進入してくるのがドレスデンからの直通快速。
リベレツ駅前の「駅」停留所。左側にある雑貨屋で1日券を買おうとしたら、「通常の切符は売ってるけど1日券は券売機で買え」と言われて(チェコ語だったので詳細は不明ながらも、たぶんそんなことを言っていた。)ホームの券売機に行くが、表記はチェコ語のみ。しかも紙幣は使えないというお粗末なマシーン。いったん駅に戻ってサンドイッチ買って小銭を作り、ふたたび券売機に戻りコインを入れると、何度入れてもコインがはじかれて出てくる。見たところコインに不具合はないのだが、らちがあかないのでもういちど買い物をしてまた小銭を作り、再度挑戦したらやっとキップが出てきた。あー大変だった。日本のすばらしい券売機が恋しいです。ちなみに1日券は80コルネ。(およそ350円)
日中は1時間に4本あり、けっこう頻度は高い。
さて、これがお目当てのすばらしい路側軌道。次回詳しくご紹介します。お楽しみに。
CANON EOS 5DMkⅡ, EF70-200/4L IS, Makro-Planar50/2, Distagon35/2 VOL.806
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