すばらしい軽便の世界 成田ゆめ牧場 まきば線 服部一人
この日、火が入っていた3台の汽車。一番上は、その昔、台湾の炭鉱で働いていた6号機、中段は縦型ボイラーの11号機で、これも自前の汽車。下段が初お披露目となった出来立てホヤホヤの7号機。木製キャブがお神輿のようで実にキュート。火が入った蒸気機関車が3台も並ぶというのも豪勢な眺め。
先の連休中に成田ゆめ牧場 まきば線に行ってきた。ここはその筋の人々にとっては有名なところ。ファミリー向けの観光牧場なのだが、園内に軽便鉄道がある。普段はDLが客車を牽引しているのだが、年に何日かある特別な日には実に愛らしい軽便蒸気機関車が登場する。
牧草地のまわりにエンドレスの線路が敷いてあるのだが、これは遊園地の乗り物ではない。 沿線は短いながらもお花畑や林や木橋などもあって、かもし出す雰囲気はまさに懐かしき軽便鉄道である。すばらしいロケーションと可愛らしい蒸気機関車。軽便好きにはたまらんところです。
ここで蒸気機関車を運行しているのは、羅須地人鉄道協会という大人の趣味団体だ。これもその筋の人にとってはとても有名な組織。この組織はただならぬ実力と行動力と、そして志を持った、おそるべき趣味人の集まりなのだ。
メンバーは全員ボランティアだが、専門職の技能を持った方がたくさんいらっしゃいます。線路敷設から保線、運行管理、普段のメンテナンスや車両のレストアなどすべてを自前でこなす。なんと蒸気機関車を1台、新規製造してしまうほどの高度な技術力を持っている。
この日はその新製された小さな汽車の試運転も兼ねて、蒸気機関車3台が稼働するという空前絶後の1日。ゴールデンウィークの見事に晴れ渡った空の下、夢のような気分で過ごしました。ありがとうございました。眼福、これに極まれり。手を合わせて拝みたいくらいでした。
この団体は実に豊かな趣味心を持った人々の集まりです。駅のホームひとつとってみても、かつて日本中に存在していた軽便鉄道の風情をたたえています。今回は五月ということで鯉のぼりが飾られていました。また園内には小さなループ線もあります。こういうストラクチャー、ディティールに凝るところがこちらのツボにはまります。
乗車には行列ができるほどの人気。小さな汽車に乗れば、子供も親も笑顔がこぼれる。自分たちの好きなことを展開して、そして人々を喜ばせ、役に立つ。趣味活動の理想的な姿のひとつがここにあります。
僕の知り合いで、この団体で活躍されている方がいらっしゃるので、この日は特別にヤードや車庫の中を見せてもらいました。車庫の中にはこれからレストアを待つお宝車両がいろいろ。夢がふくらみます。ヤードの中は、この手の趣味活動では先をゆく、ドイツなどの保存鉄道にも通じるいい雰囲気。彼の地のフェルドバーンミュージアムなどでも見た、クラブのメンバーがボランティアとして黙々と、しかし充実して楽しくキビキビと働く様子は、成熟した大人の趣味の風格が漂います。
今の季節は緑がきれいな沿線風景。下が今回新製された実に愛らしい蒸気機関車7号。オイルバーニングです。かつて日本に実在した、通称「亀の子ポーター」と呼ばれた小型機関車をモデルにしています。この日はトラブルもなく順調なスタートでした。
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