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40年前の昭和57年11月14日、上越新幹線開業前夜に、181系特急「とき」が多くの人に見送られて去っていきました。
前回に続き、その雄姿をご覧いただきます。
まなざし
クラシカルだけど、普遍的なカッコよさがある。
正視するとグッと引き込まれる。
東北本線 上野 minolta XE MD TELE ROKKOR 135mmF2.8 SS
上野駅斜陽
西日が眩しかった上野駅8番線ホーム。
切符も持っていないのに、ふらっと乗ってしまいそうな誘惑に駆られた。
東北本線 上野 minolta XE MC ROKKOR 50mmF1.4 PX
羽ばたく
擬人化(人ではなく鳥?)するのはあまり趣味ではないが、何だか力強く羽ばたいているみたいで格好いい。
このクハ181-45は、オリジナルヘッドマークを付けて鉄道博物館に鎮座している。
東北本線 北浦和-与野 minolta XE MD TELE ROKKOR 135mmF2.8+YA3 TX
想いを乗せて
本当に一瞬だった少年の視線。
金属製の行先標(サボ)が旅愁を誘う。
上越線 群馬総社-渋川 minolta XE MD TELE ROKKOR 135mmF2.8 TX
大きなヘッドマークの「とき」の文字には下に小さく「朱鷺」と書かれており、子供ながらに難しい漢字を覚えたものだ。その後イラスト入りに変わってしまったが、オリジナルのシンプルさがよかった。
特急「とき」の道、すなわち上野-新潟間を全区間歩き通した私にとって、その沿線の光景は今でもしっかりと脳裏に焼き付いている。ただし国境の清水トンネルだけは通れないので、谷川岳を(もちろんロープウエイを使わず西黒尾根を登って)踏破した。
都心の雑踏から埼玉の郊外、群馬の峠道や峡谷、そして国境を越えて上越の山峡から山里を下り、越後平野を新潟へ…この変化に富んだ道を、いつもは普通列車ばかりだったが、たまに乗る特急「とき」は、それは楽しい旅路だった。
水鏡
岩原の大カーブは12両編成の長い列車がきれいに見渡せる。
空と大地の境が分からなくなるころ、その狭間を照らすように列車がやって来た。
上越線 越後中里-岩原スキー場前 minolta XE MC W.ROKKOR 35mmF1.8 PX
輝く
渋川を過ぎれば峠道が始まる。
軽やかに、そして力強く駆け登ってゆく。
上越線 敷島-津久田 minolta XE MD TELE ROKKOR 135mmF2.8 PX
夕暮れ時
夕暮れ時、うっすらけぶる向こうの集落を見ていると、遠い街に来たなとふと寂しくなる。
空っ風のない穏やかな師走だった。
上越線 津久田-岩本 minolta XE MC W.ROKKOR 35mmF1.8 TX視界不良
湿雪で見る見る視界が霞んできた。
列車が舞い上げる雪も荒々しく重たげだ。
上越線 大沢-塩沢 minolta XE MD TELE ROKKOR 200mmF4 FX
閉ざされた駅
清水トンネルの入り口にある土樽駅は、新潟県側の国境駅だ。
雪に埋もれた入り口を開ければ、暖かいストーブが待っている。
上越線 土樽 minolta XE MC W.ROKKOR 35mmF1.8 FX
しんしんと雪が降り続く静かな午後の土樽駅。暖かいストーブの中で、まったりと休んでいた私は、時計の針が16時になるのを確認して腰を上げた。そして雪で重くなった扉を開けて絶句した。
そこは一寸先も見えない吹雪だった。まるで映画が終わって表に出ると真っ暗に日が暮れていた時のように、頭が追いつくのに一瞬の間が必要だった。
暴風雪が目と耳を襲うのも構わず歩き出す。路肩が消えそうな道路を黙々と進む。そして山中の線路がある方向に目星をつけて雪壁を登り始めると、輪カンを履いても腰まで深雪に埋もれてしまった。
ホワイトアウトと化した雪原をただひたすら力任せに泳いだ。
眼光
もう視界は僅かだった。
やがて群青色の宵闇に吸い込まれそうな森の奥から、鋭い眼光がこちらに向かってきた。
上越線 土樽-越後中里 minolta XD MD TELE ROKKOR 135mmF2.8 TX
惜別のとき
昭和57年11月14日の上野駅は別れを惜しむ人であふれた。
この後私は最後の181系、16:49発の特急とき23号に乗って新潟に向かった。
東北本線 上野 minolta XE MC W.ROKKOR 35mmF1.8 TX
(フィルム略号…FX:Panatomic-X PX:Plus-X TX:Tri-X SS:NEOPAN SS)
Vol.1677
今やっている青山でのグループ展でくびき野レールパークの写真を出品している。この写真の機関車は静態保存で実際には自走できないのだが、スモークやライトを準備して現役当時の雰囲気の再現を目指した撮影会で撮った写真だ。こうして写真に撮ってみれば、出発する直前といったリアルな雰囲気が出ていると思う。
軽便鉄道は僕にとって永遠の憧れだ。かつて全国にたくさんあった軽便鉄道も、僕はその現役時代をほとんど見ておらず、ましてや蒸気機関車が走っている姿など先人たちの写真を見て想像するだけだ。幸いなことに近頃は数々の保存鉄道を訪ね歩くようになって実物を見ることも増えてきたが、そのたびに美しい情景にうっとりし、かつての時代に想いをはせることを繰り返してきた。
心の中に抱く「軽便の夢」が目の前にある。
Hasselblad 500CM, CFVⅡ50C, Distagon50/4, Planar80/2.8 VOL.1676
信濃路の出張帰りの始発の「あさま」
お気に入りの席に座ったら、お疲れさんのちょっといっぱい、ふぃ~~~
隣のホームには同じ東京行きの「かがやき」がやってきて、さぁっと出発していきました
わたしは急ぐこともないし、「あさま」の長い乗車時間を楽しむことと致しましょう
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注・実際は呑んでおりませんです。
呑んだらおそらく、撮影はしない…ですね。(^^;
JR東日本 北陸新幹線 長野駅・上田駅
Sony α7R3 FE24-105mm F4
vol.1675
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12日の服部氏の記事内でもご案内させて頂きましたが、毎年この季節にやっておりますグループ展(服部と梅村が参画)が開催中です。
すでにご来場いただきました皆様には御礼申し上げます。
28日(月)までとなります(22日は休廊)。ご都合がよろしければお立ち寄りいただけましたら幸いです。
どうぞよろしくお願いいたします。
日本大学芸術学部写真学科卒業生鉄道愛好会
「Railway 髭おやじとゆかいな仲間たち」
2022.11.16(水)~11.28(月) 22日火曜は休廊
12:00から19:00 (最終日は17:00まで)
ギャラリーストークス GALLERY STORKS
東京都港区南青山6-2-10 TIビル4F
03(3797)0856
https://www.gallery-storks.com/index.html
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本日11月15日に上越新幹線が開業40周年を迎えました。そしてその前日、昭和57年11月14日は、私にとって生涯忘れられない日になりました。
40年という少しだけ切りのいいタイミングで、かつて上野-新潟間を走っていた181系特急「とき」の雄姿を2回に分けてご覧いただきます。
雪をけたてて
ほんの30分前に列車が去った後なのに、もう線路は雪に埋もれてしまった。
いわゆる「ドカ雪」が降ると、いてもたってもいられなかった。
スノープロウが直接雪を掻いて走る姿が撮りたかったのだ。
上越線 岩原スキー場前-越後湯沢 minolta XD MD TELE ROKKOR 135mmF2.8 KR
雪国
久しぶりの晴れ間で、雪国はつかの間の休息を迎える。
そして直ぐにまた次の雪雲がやってくる。
上越線 大沢-塩沢 minolta XD MC W.ROKKOR 35mmF1.8 KR
銀世界
白銀の越後平野を見渡したくて、どこまでも歩いて行った。
遠くの弥彦山が穏やかに望まれた。
信越本線 東光寺-三条 minolta XD MD TELE ROKKOR 135mmF2.8 KR
上越線初の特急「とき」は昭和37年6月10日に誕生し、首都圏と新潟を大幅に近づけ、そして昭和57年11月15日にその使命を新幹線に渡すまで走り続けた。
その期間は僅か20年と少し。今考えればそれは鉄道技術が飛躍的に向上するための過渡期だったのかもしれない。
ボンネットに赤い鉢巻がトレードマークの181系(誕生時は161系)は、日本初の電車特急「こだま」の151系(誕生時は20系)を勾配線区仕様にしたもので、これらはのちに性能を統一して181系とされた。その均整がとれたスタイルと風格は今なお色褪せることがない。
「とき」の他にも東海道新幹線開業後は山陽本線、そして信越本線「あさま」、中央東線「あずさ」など直流区間の花形列車として活躍した181系は、老朽化で順次撤退。最後まで残った上越線「とき」でも常に引退が囁かれていたが、14往復中の3往復で遂に最後まで走り続けてくれた。特急「とき」の終焉が181系引退の舞台となったのだ。
早春
雪国の春は目が覚めるように清冽だ。
残雪と新緑と山桜の諧調がカンバスを彩っている。
上越線 土樽-越後中里 minolta XD MC TELE ROKKOR 135mmF2.8 KM
春光
スキー客であれだけ賑わっていた冬が嘘のように静かな春。
無人のスキー場を見ていると何だかホッとしてしまう。
上越線 越後中里-岩原スキー場前 minolta XD MC ROKKOR 50mmF1.4 KM
郊外の春
大宮を出てしばらくすると、そこにはまだ雑木林が広がっていて「郊外」という響きが似合っていた。
瑞々しい緑に赤とクリームの塗装が鮮やかに映えていた。
高崎線 桶川-北本 minolta XE MC W.ROKKOR 35mmF1.8 KR
幼少から軽井沢や越後湯沢へ行くのによく「そよかぜ」「あさま」「新雪」「とき」などの181系特急に乗っていた私は、中学生になって一眼レフにリバーサルフィルムで本格的に写真を撮るようになり、初めてテーマをもったのも自然と181系だった。
車両そのものと路線の魅力、181系か上越線かどちらに惹かれたのだろうか…答えはもちろん両方なのだが、そこには必然的な要素があったと思っている。
私は車両マニアではないが181系だけは別で、先頭車を見ればナンバーまで分かるほど好きであったし、山やスキーで馴染みのある沿線は、明確な四季と情緒あふれる風情が魅力的だった。
当時の上越線には183系や485系特急に165系急行などがうじゃうじゃ走っていたがあまり撮らなかったし、昨今引退を前にして騒がれている湘南色の115系など来てもフィルムがもったいなくて撮らなかった。また181系が他の線区を走っても、そこまで追いかけることはなかったかもしれない。
自己満足かもしれないが、肝心なのは、自分がその魅力に惹かれて好きで撮っていたということに他ならない。
長い雨
しとしと降る長い雨を撮りたかった。
山里の緑が嫌という程潤っていた。
上越線 岩原スキー場前-越後湯沢 minolta XD MC W.ROKKOR 35mmF1.8 KR
盛夏
出穂前の澄んだ黄緑色の田んぼが目に優しい。
湧き出る夏雲が郷愁を誘った。
信越本線 北長岡-押切 minolta XD MC W.ROKKOR 35mmF1.8 KR
薄暮
夕刻のみちがうっすらと霞んできた。
橙色のスモールランプが寂しげに灯った。
信越本線 保内-加茂 minolta XD MD TELE ROKKOR 200mmF4+MC4 KM
夕煙立つ頃
稲穂が色づくと、芳しい香りが鼻をくすぐる。
夕空を駆けてゆく列車の音がいつまでも響き渡っていた。
信越本線 帯織-東光寺 minolta XD MC W.ROKKOR 35mmF1.8 KR
秋霖
秋の雨は一度降り出すと長い。
夕暮れ時は乳白色から群青色にゆっくりと移ろってゆく。
上越線 石打-大沢 minolta XD MC W.ROKKOR 35mmF1.8 KR
深秋
雪が来る前、錦秋の山あいは明るく澄み切って、そして静かだった。
落葉を踏む音が、やがて来る次の季節を予感させた。
上越線 湯桧曽-土合 minolta XD MC W.ROKKOR 35mmF1.8 KM
次の季節へ
最後の1年を切ってからは、常に次の季節はないと心に念じながら臨んでいた。
西日を受けて輝くその姿は、どこか遠くへ飛び立っているようで寂しげだ。
高崎線 新町-倉賀野 minolta XD MD TELE ROKKOR 135mmF2.8 KM
(フィルム略号…KM:Kodachrome25 KR:Kodachrome64)
次回に続きます。
Vol.1673
前回もご紹介した小樽市総合博物館では、僕が訪問した時に「第16回小樽クラシックカー博覧会」が開催されていた。いずれも古い鉄道車両と車。このふたつはなかなか似合う。ヨーロッパの保存鉄道でもこういう組み合わせのイベントを何度か見たことがある。僕もそうだが、旧車好きな人の中にはけっこう鉄道好きもいるのではないかと思う。のんびりと見て回って秋の1日を楽しく過ごした。
FUJI X-T3, XF16-55/2.8 VOL.1672
写真展のご案内です。
毎年この季節にやっておりますグループ展が今年も始まります。レイル・オンからは梅村と服部が出品しております。また会場内にはアメリカンスタイルのナローゲージの模型レイアウトも展示予定です。ぜひお越しください。
日本大学芸術学部写真学科卒業生鉄道愛好会
「Railway 髭おやじとゆかいな仲間たち」
2022.11.16 - 11.28 (11.22休廊)
12:00 - 19:00(最終日17:00終了)
Gallery Storks
港区南青山6-2-10 TIビル4F
旭岳に初冠雪の便りが届く頃、北の大地は絞り出すように彩色が施されます。
つい先日まで半袖に汗をかいていたことを思うと、四季の曲がり角がそこにあったのだと気づかされます。
残月静やか
煌々と空に浮かんでいた残月が、静かに西の空に眠ろうとしている。
陰陽が融合した穏やかな朝だった。
根室本線 山部-下金山 HASSELBLAD 201F Planar FE 110mmF2 T* RDPⅢ
光る秋
目を瞑って息を吸い込むと、色づいた木々の香ばしい匂いが鼻をくすぐる。
少しばかりの風を残して列車が足早に駆けて行った。
根室本線 金山-東鹿越 HASSELBLAD 201F Distagon FE 50mmF2.8 T* RDPⅢ
森のささやき
列車が来ない長い時間がゆっくりと過ぎていく。
葉が擦れる音に鳥のさえずり、時々エゾシカの甲高い声が森の奥から聞こえてくる。
根室本線 金山-東鹿越 HASSELBLAD 201F Tele-Tessar FE 250mmF4 T*+2XE RDPⅢ
錦秋のスクリーン
午後の列車が来る頃には陽は既に傾いていた。
水辺の錦秋は陰影が強くなってきた。
根室本線 金山-東鹿越 HASSELBLAD 201F Distagon FE 50mmF2.8 T* RDPⅢ
雪虫舞う頃
秋の陽が山の端に隠れる頃、底抜けの明るさが大地を照らす。
少し早い冬の使者が盛んに踊っていた。
根室本線 山部-下金山 HASSELBLAD 201F Tele-Tessar FE 250mmF4 T* RDPⅢ
月夜の北斗
北斗七星がゆっくりと北の空を辿ってゆく。
月が高く登ればやがてうっすらと見えなくなるのだろう。
根室本線 山部-下金山 HASSELBLAD 201F Distagon FE 50mmF2.8 T* RDPⅢ
Vol.1669
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