福島交通軌道線 掛田駅とモハ1115 服部一人
福島交通にはかつて軌道線があって路面電車と郊外の町を結ぶインターアーバンの風情を共にあわせ持った鉄道であった。1971年に全線廃止されているので私自身ももちろん現役時代を知ることはない。けれど今でも趣味誌などで往時の写真を見ると実にいい雰囲気のローカル私鉄であったことがうかがえる。砂利道の路側軌道、高さの低いホーム、鉄道道路併用橋など、今ではもう見ることができない情景が随所にあったことがわかる。
軌道線の終点のひとつ掛田駅は今でも駅舎が保存されてバスターミナルの待合室として使われている。その掛田駅が昨年リニューアルされて別の場所にあった保存電車も移設されたという話を見つけて行ってみた。モハ1115は新しくペイントされて新車のような輝きである。駅舎も一部に路面電車ミュージアムが併設されて当時の写真などが飾ってあるということだが訪問した日は残念ながら休館日であった。
このあたりの地域も全国の地方の例に漏れず車社会で、鉄道どころか路線バスも次第に縮小している。しかしかつてはこんな町にまで小さな鉄道が来ており1両の電車が行ったり来たりしていた。この掛田駅は1911年の開業で1971年の廃止なので、60年間はそんな時代が続いていたのだ。当時の駅舎の前にたたずんでしばし往時に想いを巡らせた。
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