2023年3月12日 (日)

遥かなる旅愁-酷寒模様②  深川俊一郎

3月6日、JR北海道が根室本線の富良野-新得間について、2024年3月31日限りの廃止を提示し、沿線自治体はこれを受け入れる方向であることが報道されました。
いよいよこの時が来たのかと、頭の中を空白が覆っています。
沿線の市民団体は存続を求めて道に署名を提出するなど、懸命に存続を訴えています。
私たちにできることはとても小さなことですが、このかけがえのない鉄道風景を、引き続き伝えていきたいと思います。

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酷寒模様

極限まで冷やされた濃密な湿度が行く手を阻む。
人を寄せ付けない見えない壁がそこにあった。
根室本線 金山-東鹿越 HASSELBLAD 500CM Distagon CF 50mmF4 RDPⅢ

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白い獣道

小さな足跡に誘われるように雪を踏みしめた。
遅い朝陽がようやく凍える森を照らした。
根室本線 金山-東鹿越 HASSELBLAD 500CM Distagon CF 50mmF4 RDPⅢ

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氷雪の小径

冷たくも繊細な化粧を纏った木々が迎えてくれた。
手足の凍りつく冷たさに反して、気持ちは少しだけ温かな朝だった。
根室本線 下金山-金山 HASSELBLAD 500CM Distagon CF 50mmF4 RDPⅢ(+1)

Vol.1718

2023年2月27日 (月)

遥かなる旅愁-酷寒模様①  深川俊一郎

酷寒の大地に身を置けば、張りつめた厳かな空気に気持ちが冴えわたります。
絶え間ない雪雲とその狭間から時折差す弱々しい陽射しが、鈍色の空に僅かなリズムを与えます。

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長い眠り

忘れ去られたドライフラワーのように、深紅のナナカマドが凍りついている。
春が来る前には鳥たちに啄まれて無くなっているだろうか。
根室本線 富良野-布部 HASSELBLAD 500CM Distagon CF 50mmF4 RDPⅢ

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残月遥か

まだ眠たげな西の空に、今まさに残月が消えんとしている。
弱々しい朝陽が今にも雪雲に吸い込まれそうな朝だった。
根室本線 山部-下金山 HASSELBLAD 500CM Planar CF 80mmF2.8 T* RDPⅢ

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粉雪

サラサラと、つかみどころのない粉雪が静かに舞っている。
あのトンネルの向こうにはどんな景色が広がっているのだろうか…
根室本線 金山-東鹿越 HASSELBLAD 500CM Tele-Tessar CF 350mmF5.6 T* RDPⅢ(+1)

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宵闇迫る

遠くの山も霞んできた。
赤いシグナルが宵闇を引き寄せる。
根室本線 山部-下金山 HASSELBLAD 500CM Sonnar C 250mmF5.6 T* RDPⅢ

Vol.1714

2023年2月15日 (水)

路面電車紀行-雪晴れの函館市電  深川俊一郎

港町に振り続けた雪が夜半には止み、眩しい朝を迎えました。
寒さと大雪に包まれて、ササラ電車や重量級の旧型車が白い軌道を進みます。

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夜明けの街角
雪雲は既に去っていた。
重厚なモーターの唸りが夜明けの街角に響き渡る。
函館市電 松風町-函館駅前 HASSELBLAD 500CM Distagon CF 50mmF4 T* RXP

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大雪のあと
2台のササラ電車がいつでも待機しているのは心強い。
一仕事終えた後でも、まだ車庫内の除雪が残っていた。
函館市電 駒場車庫前 HASSELBLAD 500CM Sonnar C 150mmF4 T* RXP

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眩しい軌道
白い軌道に光るレールが眩しかった。
空転を抑えながら慎重に加速する。
函館市電 車内 HASSELBLAD 500CM Sonnar C 150mmF4 T* RXP

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救援
交差点の真ん中で、前にも後ろにも進めなくなってしまった電車がいた。
すかさず後続の530が鉄棒で連結し、押して引いてを繰り返して救出した。
函館市電 十字街-末広町 HASSELBLAD 500CM Sonnar C 150mmF4 T* RXP

Vol.1710

2023年2月 3日 (金)

北へのいざない-函館遠望  深川俊一郎

私にとって北の玄関口はいつだって函館です。
連絡船時代から青函トンネル開通、そして新幹線上陸へと時代が変わっても、北へのいざないは変わることがありません。

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港町遠望
途切れている何本もの線路を見ると、そこが終着駅であり、また始発駅であることを実感する。
何度も乗った摩周丸が、今にも出航するのではないかと錯覚してしまう。
函館本線 函館 HASSELBLAD 500CM Tele-Tessar CF 350mmF5.6 T* RDPⅢ

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遥かな旅路
木古内を過ぎて最後のトンネルを抜けると、函館平野が一気に広がる。
新幹線が北海道に上陸したのを実感する時だ。
北海道新幹線 木古内-新函館北斗 HASSELBLAD 500CM Tele-Tessar CF 350mmF5.6 T*+2XE RDPⅢ

Vol.1706

2023年1月21日 (土)

里山の休日-いすみ鉄道  深川俊一郎

長閑な房総の里山を、小さな気動車が走ります。
休みの日には、待望の旧型車が花を添えるのです。

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ひだまり
ゆっくりと、とてもゆっくりと、小さなスポーツカーが踏切を渡っていった。
いすみ鉄道 久が原-総元 HASSELBLAD 201F Distagon FE 50mmF2.8 T* RDPⅢ

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里山
キハ28引退により、二色塗りのキハ52が単車で走ることになり、私の好きな光景が再現された。
いすみ鉄道 久が原-総元 HASSELBLAD 201F Distagon FE 50mmF2.8 T* RDPⅢ

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午後の散歩道
色褪せたゼブラ模様が、深い空に吸い込まれてゆく。
いすみ鉄道 国吉-上総中川 HASSELBLAD 201F Distagon FE 50mmF2.8 T* RDPⅢ

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ひといき
急かすでもなく、いい子でお婆さんを待っていた夕刻。
いすみ鉄道 国吉-上総中川 HASSELBLAD 201F Distagon FE 50mmF2.8 T* RDPⅢ

Vol.1702

2023年1月 9日 (月)

冬の足音-小湊鐵道  深川俊一郎

暦が冬になっても、暖かな陽射しの片隅に少しだけ秋が残ります。
穏やかな小春日和の一日。

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秋の名残
フリーハンドで描いたように、レールがゆるやかに森の向こうへと続いている。
小湊鐵道 飯給 HASSELBLAD 201F Tele-Tessar FE 250mmF4 T* RDPⅢ

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冬の足音
光る穂波の向こうには、確かに冬の足音が聞こえる。
小湊鐵道 月崎-上総大久保 HASSELBLAD 201F Tele-Tessar FE 250mmF4 T* RDPⅢ

Vol.1698

2023年1月 3日 (火)

「Rail-On 謹賀新年号 3号車」  深川俊一郎

本年もよろしくお付き合いいただきたく、お願い申し上げます。
写真で伝える者にとって、「撮る」ことが基本なのは言うまでもありませんが、フィルムと現像価格の高騰で、今や6×6一コマ約263円にもなります。
一コマ一コマを大切に心を込めてシャッターを押すことを信条としていますが、それにしても…です。
一方で最近は、撮っている人を近くで見ていると、カメラのスペック任せにものすごい勢いで連写しています。私の1本分のフィルムを一瞬で撮りきっているかのようです。その中から何枚選んでいるのか分かりませんが、動画と静止画の概念が崩れてしまいそうだな…とぼんやり思ったりしています。
シャッタータイムラグにとどまらず、反射神経の減退とともに、ほんのわずかにタイミングがずれることも少なくありません。そんな時に「それも臨場感」と笑って流せるようになれればいいのですが…それにしても本当の一瞬とは物理的なことだけでなく、もっと別の次元のことのような気もするこの頃です。
それでは本年の一作目。コールドムーンが静かに見守る、夜明けの根室本線です。

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寒月

12月の冷たい満月が寒空を高く昇り、ゆっくりと西の空に眠ろうとしている。
夜明け前の列車は暁の空を受けて、うっすらと赤紫に染まった。
根室本線 音別-白糠 HASSELBLAD 500CM Sonnar C 250mmF5.6 T* E100(+2)

Vol.1694

2022年12月31日 (土)

2022 今年の1枚 水の郷ふたたび  深川俊一郎

今年も一年お付き合いいただき、ありがとうございました。
存続の是非が問われていた根室本線の富良野-新得間は、残念ながら沿線自治体が鉄道による存続を断念しました。北海道の鉄道はまさに正念場を迎えており、引き続き見つめていきたいと思います。
一方で只見線が11年の歳月を経て、念願の再開通を果たしました。沿線の皆さんと自治体、そして只見線を取り巻くすべての方々の熱意の賜物です。
今年の1枚「水の郷ふたたび」は、私自身3年ぶりの只見線訪問、そしてこの場所に立ったのがおそらく14年ぶりという一コマです。
再開通区間のなかでも只見線を象徴する光景が広がる寄岩近辺を、対岸の鷲が倉山から見下ろすと、水辺に切り立つ蒲生岳の裾を張り付くように列車が辿ります。
そこへの道のりで対峙したのは、14年の歳月により、もともと道なき道であった藪山の獣道が、人を完全に拒むほどに自然へと回帰していた実態でした。
無情な時の流れと偉大な自然の力を実感した次第です。
それでは皆さまどうぞよいお年をお迎えください。

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Vol.1689

2022年12月21日 (水)

小さなクリスマス電車-三岐鉄道北勢線  深川俊一郎

軌間762㎜のナローゲージは営業路線で日本に3カ所しかなく、そのうちの一つが三岐鉄道北勢線です。
レトロ感たっぷりのツートンカラーの編成が、ささやかなクリスマスの装いでのんびりと走ります。

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小径
路地裏の小径から、おはようの声が聞こえてきた。
北勢線 馬道 HASSELBLAD 201F Tele-Tessar FE 250mmF4 T* RDPⅢ

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間近
本当に手が届きそうな間近の線路を、電車がゆっくりと走ってゆく。
北勢線 星川-七和 HASSELBLAD 201F Distagon FE 50mmF2.8 T* RDPⅢ

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遅い冬
名残の秋の上から、ようやく冬らしい雲が迫ってきた。
北勢線 楚原-麻生田 HASSELBLAD 201F Distagon FE 50mmF2.8 T* RDPⅢ

Vol.1685

2022年12月 9日 (金)

駅前のねこ-2 小さな電停  深川俊一郎

街角交差点にある小さな電停は、併用軌道から専用軌道への入り口にあります。
せわしなく行きかう人々の足元を、チョロチョロとねこたちも行きかうのです。

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いつもの朝

小さな小さな駅前広場は格好の遊び場だ。
熊本市電 新町 HASSELBLAD 201F Distagon FE 50mmF2.8 T* E100(+1)

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間近の電車

本当に電車が近い特等席。
熊本市電 新町 HASSELBLAD 201F Planar FE 110mmF2 T* E100(+1)

Vol.1681

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